名取宏氏インタビュー

グルタチオン配合の「白玉点滴」「美白サプリ」はニセ医学? 医師に聞く「証拠はほぼない」恐るべき実態

2019/11/09 16:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

経口サプリ「グルタチオン」の安全性に疑問

「Qoo10」公式サイトより

――経口サプリの「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」が、現在、売れているようなのですが、実際に美白効果は望めるのでしょうか。

名取 私も調べてみて驚いたのですが、経口のグルタチオンについては美白効果があったとする臨床研究が少ないながらあります。ただし、研究の質はあまり高くなく、本当に効果があるかどうかは確定的ではありません。また、どれぐらいの量をどれぐらいの期間摂取すればいいのかも一定の見解はありません。うがった見方をすると、サプリを売りたいメーカー側が、小規模な臨床研究を行い、たまたま良い結果が出たものだけを発表した可能性も否定できません。そもそも「美白」というのは、主観的に判断されがちという点も踏まえ、経口のグルタチオンは、美白に「効かないとは言えないが、効くとも言えない」程度のものなのではないでしょうか。

――安全性の面ではいかがでしょうか。

名取 経口のグルタチオン摂取は、かなり安全だと思われます。ただ、医薬品のグルタチオン錠ではなく、グルタチオンを含むサプリメントの類いだと、安全性が保証されているとは限りません。

――ちなみに「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」は、「栄養素破壊から保護するために不可欠なリン脂質によって作られたリポソームを使用している」点をアピールしています。つまり「グルタチオンが体内に長く残る」ことで、ほかの経口サプリと差別化を図っているようです。


名取 「リプライセル リポソーム GSH グルタチオン」は、医薬品ではなくサプリなので、ちゃんとした論文がない、もしくはあっても提示されていないと思うのですが、本当にリン脂質によって栄養素破壊から保護されるというデータはあるのか、もし保護されたとして美白効果が上がるというデータはあるのか、疑問を抱かざるを得ません。そもそも美白効果自体があるかどうか、わからないですしね。

 もう一つ、グルタチオンが「体内に長く残る」というのは、直感的に「怖い」と思いました。それだけ副作用のリスクが上がるからです。一般的なグルタチオン錠には、これまで大きな副作用はなかったものの、リン脂質という“余計なもの”をくっつけたせいで、副作用が出る可能性もあります。副作用のリスクについては、果たしてちゃんと調べているのでしょうか。もし調べているのであれば、それを提示すべきだと思います。

「ニセ医学」に騙されないために 科学的根拠をもとに解説 新装版 / 名取宏