サイゾーウーマンカルチャー社会DV・虐待者の「更生・回復」を考える カルチャー 『ザ・ノンフィクション』目黒・虐待死事件考察 DV・虐待者の「更生・回復プログラム」を考える――『ザ・ノンフィクション』「目黒・結愛ちゃん虐待死事件」 2019/11/02 19:00 森田ゆり 社会ザ・ノンフィクション DV被害者の恐怖は「死」と直結する 優里被告の公判では、検察官とのやりとりから、雄大被告が“恐怖”で妻を支配していた様子が見て取れます。 検察官:夫の報復が怖かったって話が出ているんですけど、報復って何ですか。 被告人:例えば、結愛を連れて逃げるってなった時に、「俺は全国各地、色んな所に友達がいる」って、そういう説教があるんですけども、だんだん……この場で言うのもおかしいけど、殺されるとか、そういう……感じ、です。 (2019年9月5日 目黒事件 母親被告人検察論告詳細報告より) おそらくこの検察官には、優里被告の言う「殺される」恐怖のリアリティはわからないに違いありません。DV被害者の恐怖は、言う通りにしなかったら「死」が待っていることなのです。そして実際に殺されてしまった女性たちを、私たちはどれだけ見てきたでしょう。 検察官:当時は離婚したいという思いはあった。 被告人:ずっとありました。 検察官:夫が逮捕されたら、離婚できるって思わなかったんですか。 被告人:逮捕された後に、死刑とかにならない限り、絶対に戻ってきて、絶対に報復されるから、絶対全国どこに逃げても、探偵使ってでも追いかけられるから……できないです。 (2019年9月5日 目黒事件 母親被告人検察論告詳細報告より) 雄大被告は13年、優里被告は8年の懲役刑(控訴中)。どちらも服役中の態度がよければ早く釈放されるでしょうから、そんなに先のことではありません。雄大被告が刑を終えて出所した後、優里被告と息子の居場所を探してコンタクトしてくる可能性は、極めて高いと思われます。優里被告は、雄大被告が執念深く自分を追ってくることを知っています。その不安とともに、これから生きていくのです。 次のページ 「更生・回復プログラム」の受講を命令する法律がない日本 前のページ123次のページ 楽天 母親の孤独から回復する 虐待のグループワーク実践に学ぶ 関連記事 虐待者の心理を理解する必要性について――『ザ・ノンフィクション』「目黒・結愛ちゃん虐待死事件」『ザ・ノンフィクション』友人が語る船戸雄大被告の実像『親になろうとしてごめんなさい~目黒・結愛ちゃん虐待死事件~』目黒・結愛ちゃん虐待死で懲役8年――専門家が語る「虐待を防ぐために私たちがすべきこと、社会がすべきこと」元職員が語る「児童相談所」バッシング――目黒虐待死の事実は重い、それでも知ってもらいたいコト『ザ・ノンフィクション』元受刑者への支援は“甘え”なのか?「半グレをつくった男 ~償いの日々…そして結婚~」