『つづ井さん』担当編集者に聞く、「腐女子」「オタク女子」コミックエッセイがウケる理由
「CREA WEB」アクセスランキングで第1位に輝くなど、多くのファンを抱えている『裸一貫! つづ井さん』。白川さんいわく、オタクでない読者の方も多い「CREA WEB」で連載を始めるにあたり、「つづ井さんが今、『腐女子(BL)』という一ジャンルにとどまらず、オタク女子特有の“明るさ”で日々をたくましく生きている姿、また、オタク気質で意気投合した仲間たちと工夫して遊んでいる様子が、より伝わるようなタイトルを、つづ井さんとご相談させていただいた」そうだ。
「そんな“魂がオタク”なアラサー女子の生き方をつづる『裸一貫! つづ井さん』は、オタクではない方々にも多く読んでいただけているようです。本作の“アラサー”“おひとりさま”というテーマに共感を抱き、『どのように日々を楽しんでいるのだろう?』という視点で楽しんでくださっているのかもしれません。また、やはりご友人たちと仲良く遊んでいる姿に癒やされるという声も多く、『「つづ井さん」はオタク界のSATC※』なんて言われることもあります(笑)。読者層は広がっていると感じています」
※『Sex and the City』ニューヨークを舞台に、30代独身女性4人が自由に生きる姿をコミカルに描いた海外ドラマ。
確かに、作中でつづ井さんと友人たちは、お金をかけずに日々の生活を楽しむさまざまな“遊び”を披露している。例えば、「何かをお世話したい 育てたい…」という欲求を持て余した際、今まで特に気にしてこなかった自分の「尻」のお世話をすることを決意。スクラブを塗り込んだり、保湿を心掛けたりしているうち、愛おしさを抱くようになり、ある日、尻がプリプリになったことに気づいた時には「尻が私のお世話に応えてくれたんだ」と感動を噛みしめる。また、友人たちとのお泊まり会では、ふと思い立って深夜の公園を訪れてはしゃぎ倒したり、お風呂に入る順番を決めるために相撲を取ったりするなど、さまざまな楽しみを見つけ出していく。
「私個人の感覚として、腐女子やオタク女子の方って、好きなものに素直でひたむきだと思います。それに自分で自分を楽しませることにすごく長けていらっしゃる。『結婚しろ』『出産しろ』といった社会からの圧力に囚われないで、『“私”が“今”好きなこと』にまじめで一直線な方が多い印象もあります。そしてつづ井さんとご友人たちとの様子を見ていて実感するのが、自分とはジャンル違いな仲間に対しても否定せずに尊重したり、逆に自分のジャンルを布教したりする姿。『腐女子』や『オタク女子』って、自分や他者の“好き”を大切にする、やさしい世界なのではないかなと思うんです。そこから生まれる自己肯定感が“明るさ”につながり、彼女たちの魅力になっているのではないでしょうか」
『裸一貫! つづ井さん』のプロローグには、こんな一説がある。「そんな私も気づけば20代後半…同級生の結婚&出産ラッシュ…職場などでは日々『いつまでそんな感じなの?』『ちゃんと将来考えなよ~』と言われ…私は…私は…特にな~んとも思ってませ~ん ピッピロピ~」。こうした、あっけらかんとした明るさに心をつかまれる人は、確かに「腐女子」「オタク女子」以外にも少なくないのではないだろうか。