サイゾーウーマンカルチャーインタビュー『24時間テレビ』は感動ポルノ? カルチャー 「バリアフリー研究所」代表が見る『24時間テレビ』 『24時間テレビ』を障害者はどう見る? 「バリアフリー研究所」代表に聞く 2019/08/25 15:00 カワノアユミ インタビュー 『24時間テレビ』(日本テレビ系)公式サイトより 現在、放送されている『24時間テレビ 愛は世界を救う』(日本テレビ系、8月24~25日)。嵐をメインパーソナリティに起用し、ジャニー喜多川氏への追悼企画や、嵐・相葉雅紀主演ドラマなど、ジャニーズファンを喜ばせるような内容がそろっているが、この番組の目玉は、障害者や難病患者などのチャレンジ企画だ。今回も、義足の少女や、ろう学校の生徒を“応援”する企画が放送される。 しかし近年、同番組における障害者への演出に対し「感動ポルノ(健常者に勇気や希望を与えるための道具)ではないか?」という声も寄せられている。 2016年に放送された裏番組『バリバラ』(Eテレ)では「検証!『障害者×感動』の方程式」がテーマに掲げられ、本家を「感動ポルノ」と皮肉に扱った内容が大きな話題を呼んだ。今年も、同番組では「2.4時間テレビ 愛の不自由、」というテーマで放送している。 はたして『24時間テレビ』は「感動ポルノ」なのだろうか? サイゾーウーマンでは、17年にバニラ・エア搭乗拒否騒動で話題になった「バリアフリー研究所」代表の木島英登氏に、同番組の障害者の取り上げ方について聞いている。再掲するこの機会に、ぜひ読んでいただきたい。 (編集部) (初出:2017年8月27日) *********** 「バリアフリー研究所」代表・木島英登氏 “募金する人が正しい”とされる、押しつけ感のある雰囲気が好きでない ーーご自身も過去のけがで下半身不随になり、車いすで生活する障害者のおひとりですが、『24時間テレビ』はご覧になりますか? 木島英登氏(以下、木島) 自分が障害を持つ前から、『24時間テレビ』は見ていません。もともと、ファンタジーよりリアリティーが好きなので、『24時間テレビ』のように作られた演出で涙を誘うものよりも、リアリティーあるドキュメンタリー番組のほうが好きですね。 ーー『24時間テレビ』のような番組を放送することについて、どう思いますか? 木島 見る人がいるから番組が放送されていると思うんですが、個人的には「皆、なぜ見るのかな?」という思いです。私も、たまたまテレビをつけたら『24時間テレビ』が放送されていて、見たことはあるのですが、どうも心地悪いというか……リアリティーがないんですよね。私が、怪我で車いすの生活になったのは高校3年生のときでした。当時は「もしかしたら、『アルプスの少女ハイジ』のクララのように、奇跡が起きて歩けるようになるんじゃないか」と考えたこともありましたが、そんな奇跡は絶対にありえない。リハビリすれば歩けるようになる病気もあるんでしょうけれど、私のように脊髄損傷で下半身不随になった場合、歩くことは絶対に不可能なんです。 『24時間テレビ』も視聴者からしたら、「かわいそうな人が頑張るストーリー」がわかりやすいから、受けているのかもしれませんね。事実、視聴率も高いから放送しているんでしょうけど、個人的には残念という思いはあります。また、募金もあまり好きではないです。アフリカやアジアで、募金がひどい使われ方をしているのをたくさん見ています。募金しても政治家が半分持っていったりとか、寄付した洋服が流れ流れて露店で売られているとか、使われ方を末端まで管理するのが難しいんですね。とはいえ、寄付自体を全否定しているわけではなく、“募金する人が正しい”とされる、押しつけ感のある雰囲気があまり好きではないです。 ーー近年ますます批判が高まっているにもかかわらず、番組を毎年放送することをどう思いますか? 木島 批判が高まっているといっても、テレビを見ている人たちは、批判されていることすら知らないかもしれません。確かにネット上では批判されているかもしれませんが、今の世の中、テレビを見ているほとんどが高齢の方ばかりで、ネットを見る人たちはテレビを見ていないのでは、と思います。また、『24時間テレビ』に限らず、ネットの評価って基本批判が多いじゃないですか。良い評価ってあまり書かれないので、一概に批判が高まっているとも言い切れません。ただ、障害当事者の中では、あまり評判がよくない印象はあります。 次のページ 「感動ポルノ」と言われるものについて 123次のページ 楽天 心のバリアフリーってなんだろう? 関連記事 「障害者について知らないからこそ、怖いと思っていた」社会が変わるために必要なこととは?障害者の「選択肢」を増やす――放課後デイサービスと就労継続支援B型事業所がもたらすもの「精神障害者になると思ってなかった」当事者が語る生活保護受給者の実情「障害者はテレビで利用されている」ろう者の両親を持つ韓国映画監督が語る、障害者問題「健常者が考えつかない世界がある」身体障害者の劇団主宰が語る、障害者にしかできない表現