[女性誌速攻レビュー]「an・an」2019/08/21号

「an・an」SEX特集「深い愛を育む」というテーマを棒に振る、田中圭の「ヤンチャなエッチ観」

2019/08/14 14:00
島本有紀子
「an・an」2019/08/21号(マガジンハウス)

 夏の風物詩、「an・an」(マガジンハウス)の「SEX特集」号が発売されました。今年のテーマは「触れあい、感じあう。ふたりの幸せな時間。 愛とSEX」。冒頭の解説記事によれば、この1~2年で現代人のセックス観は男女ともにますます草食化していて、「ひとりの人と深い愛を育む」方向へ著しく変化しているそう。同誌が行ったアンケートでは、20代女性では38%、30代でも25%がバージンとの結果が出たといい、一因には「SNSの普及で、恋愛のいざこざがすぐに友人間で拡散してしまうこと」があるとしています。

 それによってセフレ文化も衰退しているとのことで、「an・an」では、今が「“愛あるセックス時代”の幕開け」とも表現しているのですが、そんな時代の「SEX特集」には一体何が書かれているのか……早速中身を見ていきましょう!

<トピックス>
◎田中圭 しあわせな体温。
◎心揺さぶる、甘美なひととき…。7人が語る幸福なセックス。
◎気になるトピックを大調査! SEXムーブメント最新事情。

田中圭の半裸が不気味

 表紙は俳優の田中圭。この特集ではおなじみである「半裸のベッド写真」なのですが、彼の持ち味である“その辺にいる兄ちゃん感”が、隣に寄り添う下着姿の外国人女性モデルと妙にミスマッチ。じっと見ていると、「居酒屋の兄ちゃん×北欧の妖精さん」くらい世界観が違うものをむりやり継ぎ合わせた、合成写真に見えてくる不気味さがあります。

 田中の“筋肉の上に薄く脂肪が乗っていて、猫背がち”という裸体には親しみを覚えるものの、インタビューでも”その辺にいるおちゃらけ兄ちゃん”感がすごいのです。「(相手役のモデルに)来日してどれくらいかと聞こうとして、ハウマッチ?って言っちゃいました(笑)」「(口説くのが苦手なので)相手に『お願いお願いお願い』って頭を下げる方が、完全に自分のキャラ」など、ムードは皆無。


 さらに「昔はすごくピュアだったんで(笑)、お付き合いするところまでいかないとエッチしません、っていうタイプだった」と、思わず「今は!?」とツッコみたくなる発言をし、「体の相性ってあるし、エッチして気づくこともある。付き合ってから、相性が合わなかったって気づくほうがつらくないですか」と、やんわりと“やってみて相性が合わなかったら捨てるぜ”という意味のことを言っています。冒頭で「愛あるセックス時代の幕開け」「セフレ文化が衰退」と書かれていたので、今年は「セックスありきの愛」ではなくて、「愛ありきのセックス」に焦点を当てていくのかな? と思っていたところでのこの発言。田中圭、人選ミスでは……?

 一方、表紙ではないものの、今号ではもうお一方、半裸を披露している俳優がいて、それが志尊淳。志尊は直木賞作家・井上荒野氏の官能小説が原作のドラマ『潤一』(関西テレビほか)に主演中。「an・an」では、そのスピンオフとなる書下ろし小説『「霧人」(二十六歳)』と併せて、志尊のイメージカットが掲載されています。

 この「『霧人』(二十六歳)」の内容をざっくりまとめると、ホストである霧人が、常連客の女性、新人ホストの潤一(志尊)と新大久保のラブホテルに入り、3人で致すというもの。こちらも、「an・an」が提唱したいはずの「ひとりの人と深い愛を育む」とは逆を行くスタイル。

 現実での冒険が難しくなっている現代だからこそ、創作物では刺激を! という趣旨なのだろうか? とも感じました。

anan (アンアン) 2019年 8/21号 [雑誌]