「日本女性は恐ろしい状況にいる」避妊の選択肢が示す“女の人権”とは?【早乙女智子×福田和子対談】
――この先、日本の避妊事情が改善されていくにはどうしたらいいと思いますか?
早乙女 何でも選ぼうと思えば選べる今の時代ですし、まずは日本で使えるピルやIUSから選んでいき、「自分の人生ってなんだろう」、「自分の人生の中でセックスってなんなんだろう」と突き詰めて考えていくということを、「一人ひとり」女性がやっていくことが大切です。製薬会社からしてみれば、ピルも売れていないのにほかの避妊法が売れるのだろうか? と疑問にもなりますし、それが避妊法が増えない理由のひとつになっていますからね。
福田 大学の卒論を書く時に、「何で日本にパッチがないんですか」と製薬会社へ問い合わせたのですが、「ピルが売れてから」という返事がすごく多かった。ピルの普及率が4%ということもあり、女性主体の避妊はマーケットがないと見られているんです。ただ、知らないものが求められないのは当然ですし、勝手に市場がないと判断されるのはちょっと違うかな。
早乙女 そこもスティグマを作り出すのに十分で、「ないなら認可されるように動いて行こう」という方向より、「コンドームしかない」という話に追い込まれちゃうんだよね。
福田 これだけ避妊法があるという話を女性にしたら、パッチを試してみたいとか、いろいろな避妊法に手が挙がるから、まずは知ることから広げていって、「ほしい」という声が出てくれば、女性の願いがかなえられていない現状も変えられるのではないかと思います。今の日本には、“普通”に“当たり前”にあっていいはずのものがないということにまずは気付いてほしい。そんな思いでやっている「#なんでないの」プロジェクトの活動やこの対談などが、多くの女性のマインドセットが変わるきっかけになってくれたらと思います。
早乙女智子(さおとめ・ともこ)
日本産科婦人科学会専門医。日本性科学会認定セックスセラピスト。1986年筑波大学医学専門学群卒業。2015年京都大学大学院医学研究科単位取得退学。2019年京都大学博士(人間健康科学)取得。世界性の健康学会(WAS)学術委員、厚生労働省社会保障審議会人口部会委員。1997年に経口避妊薬の認可に向けて結成した一般社団法人性と健康を考える女性専門家の会代表理事。ジョイセフ理事。現在は、倖生会身原病院産婦人科常勤医および公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター研究員。著書『避妊』(主婦の友社)、監訳『ピル博士のピルブック』(メディカルトリビューン)他。
福田和子(ふくだ・かずこ)
#なんでないのプロジェクト代表、世界性の健康学会(WAS)Youth Initiative Committee委員、I LADY.ACTIVIST、性の健康医学財団機関誌『性の健康』編集委員、国際基督教大学
大学入学後、日本の性産業の歴史を学ぶ。その中で、どのような法的枠組みであれば特に女性の健康、権利がどのような状況にあっても守られるのかということに関心を持ち、学びの軸を公共政策に転換。その後、スウェーデンに1年間留学。そこでの日々から日本では職業等にかかわらず、誰もがセクシャルヘルスを守れない環境にいることに気付く。「私たちにも、選択肢とか情報とか、あって当然じゃない?」 との思いから、17年5月、『#なんでないのプロジェクト』をスタート。