インタビュー

「ViVi」自民党企画が波紋――軍地彩弓氏が語る「もし私が女性ファッション誌で政治を扱うなら」

2019/06/27 10:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

「無自覚層」と「意識の高い層」に二極化する20代女性

 では軍地氏は、「ViVi」の読者層にもあたる、20代女性の政治意識をどのようにとらえているのだろうか。

「無自覚層と意識の高い層の二極化が進んでいると感じます。昔はテレビや新聞が発信する公の情報が、ある程度末端にまで伝わってきたと思うのですが、今のネット時代では、アルゴリズムによってフィルターバブルが進み、それが無自覚層の拡大につながっているのではないでしょうか。しかし一方で、『今のままじゃいけない』『世の中を変えよう』と考える若い女性も増えてきたと思います。今年『SPA!』(扶桑社)の『ヤレる女子大学生RANKING』が炎上し、20代の女性が、記事に反対する署名運動を起こしましたが、こうした“上の世代が見逃してきたこと”を見逃さずに、声を上げる人が出てきたのです。若い世代の間で新しい秩序が出てきていると思います」

 軍地氏は、20代女性ファッション誌で政治を取り上げるならば、「無自覚層」と「意識の高い層」どちらにも伝わる内容にしたいといい、「“共通言語”を見つけていくのも編集者の仕事」と語る。

「最初に、Twitterで『ViVi』の自民党キャンペーンについて触れた時、私自身、『政治の話をするのはドキドキする』と感じたんです。やっぱり政治について語ると、いろいろな矢が飛んでくるものなので。でも実際は、返ってきた反応のうち、8割は『よく言ってくれた』という意見で、特に女性からのメッセージが多く、その時、『残り2割の“矢”を怖がって何も言わないより、8割の賛同の方を希望だと思わなければいけないな』と強く感じたんです。ファッションはもともと自己表現の一つであり、『私は何者であるのか』『私はどうありたいか』を伝えるもの。そうした前提がある中で、『ファッションと政治は別物』という方が、かっこ悪いと私は思います。ファッション誌の編集者は、今読者が世の中に抱いている疑問や問題を『論点』として取り上げていくべきです」

 取材中、かつて携わっていたファッション誌の編集会議で、「政治経済を扱ったコラムをやりたい」と提案した際、男性の編集長に「女の子ってファッション誌に政治とか求めてないでしょ?」と言われ、驚いたことがあるというエピソードも明かしてくれた軍地氏。これからは、「誰だって、ファッションと同じくらい政治のことだって考えるでしょ」というのが“当たり前”になっていくことを祈りたい。


軍地彩弓(ぐんじ・さゆみ)
編集者、ファッション・クリエイティブ・ディレクター。大学卒業と同時に「ViVi」編集部で、フリーライターとして活動。その後、「GLAMOROUS」「VOGUE GIRL」に携わり、2014年には、自身の会社である「株式会社gumi-gumi」を設立。現在「Numéro TOKYO」のエディトリアルアドバイザーほか、多岐にわたる活動を展開中。

最終更新:2019/06/27 10:00
ViVi (ヴィヴィ) 2019年 08月号 [雑誌]
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