インタビュー

「ViVi」自民党企画が波紋――軍地彩弓氏が語る「もし私が女性ファッション誌で政治を扱うなら」

2019/06/27 10:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

「VERY」改憲企画の印象が強かった

 先述した通り、ここ数年、女性ファッション誌が政治をテーマにした企画を組むようになっている。例えば2014年には、「VERY」(光文社)が「お母さんこそ、改憲の前に知憲! 今、改憲が実現したら、将来、戦地に行くのは誰?」、15年には「Seventeen」(集英社)が「17sで考えよう “戦後70年”」、さらに16年には「LEE」(同)が「2016夏 参院選 もしあなたが投票に行かなかったら…」というタイトルの企画を掲載し、それぞれ大きな話題を集めていた。軍地氏は、中でも「VERY」の憲法企画の印象が強かったと語る。

「編集者の仕事というのは、あくまで生活者の目線で、みんながモヤモヤしていたり、疑問を抱いていたり、あえていま口に出して聞けないといった読者の“心のニーズ”を引き出すことだと思うのですが、『VERY』の企画は、しっかりそこを押さえていました。同誌の読者である“お子さんのいる働く女性”目線で、彼女たちがなんとなく窮屈さを感じていることを顕在化して、ちゃんと俎上に上げて論じているのが、よかったと思います。確かに20世紀には、『ファッション誌に政治的なことは入れなくていい』といった風潮があったかもしれませんが、政治は特別のものではなく、本来、国民の生活をよりよくするものです。ファッション誌が『そこを語らないのはおかしい』という見方は当たり前なのではないでしょうか」

 軍地氏は、クリエイティブ・ディレクターとして創刊・運営に携わった「VOGUE GIRL」(コンデナスト・ジャパン)で「震災」のテーマを扱ったこともあり、「生活者目線、読者目線で情報を発信することが何よりも大事」だと感じているという。

 なお「お母さんこそ、改憲の前に知憲!」という企画をめぐっては、掲載号の発売直前、内閣府広報室から「VERY」編集部に、「秘密保護法を特集するのですか。それならうちも取材してくれませんか」という電話がかかってきたという一件もあったと新聞報道されているが、軍地氏は「発売前の雑誌の内容が外部に漏れ、さらに内閣府が介入してきたとあって、とても気持ち悪さを感じたものの、編集部は毅然とした態度で取り合わず、その点も正しかったと思います」と振り返った。

「政治がタブー視される風潮があった理由は、『バランス感覚を保つのが難しいから』なのではないでしょうか。ただ、SNS時代の今、社会的にも『自分の意見を発する』ということが大事になり、タブーを持っていること自体がかっこ悪くなっているように思います。14年、シャネルのファッションショーで、モデルたちが『女性をもっと自由に』などのプラカードを持ち、ランウェイを闊歩したことがありましたが、ほかにもディオールやステラマッカートニー、ヴィヴィアンウエストウッドなど、“メッセージ性を打ち出す”ファッションブランドが増えてきているんです。トランプ政権の誕生によって、世界中に不穏な空気に包まれる中、『声を出すことがかっこいい時代』になってきたと言えるのではないでしょうか」


ViVi (ヴィヴィ) 2019年 08月号 [雑誌]