サイゾーウーマンカルチャー社会「制服自由制度」、導入1年で見えてきた“矛盾” カルチャー 一筋縄じゃいかない問題 「性別関係なく選べる制服」は成功したのか――導入1年で見えてきた、“矛盾”と“無意識の偏見” 2019/04/18 19:00 小沢由衣子 社会 Photo by toruto1234 from Flickr 昨今、「性別に関係なく誰でも自由に選べる制服」を導入する中学校が増えているのをご存じだろうか。男子だからスラックス、女子だからスカートを着用しなければならないというわけではなく、着たい制服を本人の希望で選んでよいという、新しい試みだ。 昨年3月に、千葉県の柏市立柏の葉中学校でこの制服が導入されるというニュースがネット上で大きな話題となり、多様性を認める現代にフィットした動きとして、世間の反応はおおむね好評だった。そして現在、こうした“制服自由化”の動きは全国に広まっており、東京、千葉、埼玉、福岡、佐賀など、各地で導入の検討が進んでいる。 筆者もこの“制服自由化”は非常にうれしいニュースと受け取り、さらなる情報を求め、該当エリアの地方新聞をいろいろと読んだりもした。だが、ふと取り上げられ方に違和感を覚えた。例えば、2018年10月31日付の「静岡新聞」の記事では、静岡県内にある公立中学校が制服を自由に選べるようになった、との記事が写真つきで紹介されていたのだが、そこに掲載されていた写真は、男子のブレザー・スラックスの組み合わせ、女子のブレザー・スカートの組み合わせ、そして女子のブレザー・スラックスの組み合わせの3パターンだけだった。 また、19年2月4日付の「日本経済新聞」には、埼玉県の公立中学校が紹介されていたのだが、こちらも掲載されていた写真は、スラックスを着用した女子が写っていただけ。記事にも「女子生徒の制服を従来のブレザーとスカートに加え、スラックスを選べるようにした」とあった。 いったい何に違和感を覚えたかというと、「男子がスカートをはく」という選択肢だけ、なぜかすっぽりと抜け落ちていたのだ。「日本経済新聞」の記事には、「女子も選べるスラックス 中学校制服、LGBTに配慮」というタイトルがついていたし、「学校現場で『性別と服装の不一致』に悩む子供への配慮が進みつつある」という一文もあった。それにしては、女子のことばかりが打ち出され、男子は後回しになっている……そんな思いが拭いきれなかった。 そこで筆者は、18年4月からこの制服自由制度を実施している柏市の柏の葉中学校と、19年1月29日付の「埼玉新聞」の取材に対して「男子はズボン、女子はスカートという固定観念を捨てる」という発想で、制服自由制度を導入すると宣言していた埼玉県の戸田市立戸田東中学校、そして、19年4月から区内の全公立中学の制服自由制度の導入を始めるという、中野区・世田谷区の教育委員会に取材を申し込んだ。 次のページ 「男子のスカート」に対する消極的な姿勢 123次のページ 楽天 ニッポン制服百年史 女学生服がポップカルチャーになった! 関連記事 虐待も愛情も人を殺せる。殺されないためには――中村うさぎ×伏見憲明×こうきトークショーレポ「多くの男性はまともなセックスを知らない」精神科医が語る、性教育の限界と必要性「新潮45」は近く“廃刊予定”? 小川榮太郎氏の「LGBTめぐる主張」で大炎上の舞台ウラセクシュアル・マイノリティをめぐる社会は50年でどう変わったか?【カルーセル麻紀×ディヴィーナ・ヴァレリア対談】勝間和代、確固たる地位も経済的基盤もある有名評論家が“カミングアウト”した意味