整形男子アレンもボロボロに!? セラミックやジルコニア、人工歯トラブルの実態をきぬた歯科解説
――アレンさんはそれが原因で前歯部分のジルコニアに負荷がかかり、「土台からジルコニアが揺れるようになった」と言っています。
きぬた 顎というのは上下、前後、左右と、あらゆる角度で自由自在に動くものですが、アレンさんはジルコニアに差し替えた際、前歯を内側に倒したため、上の前歯と下の前歯がクローズ状態となり、稼動域が限られてしまった。それでも、今まで通りに顎を動かそうとして、上の前歯と下の前歯がガンガンぶつかり、負荷がかかったというわけです。セラミックは、負荷がかかると割れて、それが「このままでは歯根に無理が生じますよ」という警告になるのですが、いかんせんジルコニアは強力に硬い。すると、歯根が衝撃を受け続ける状態になるのです。
――ジルコニアは無傷なのに、その中の歯根がダメになるのですか?
きぬた 車を例に説明しましょう。昔、車のボディーというのは硬かったのですが、最近は柔らかい材質になっています。というのも、車がぶつかった際、ボディーが硬いと、ボディー自体は平気なのですが、衝撃が中に乗っている人に伝わるのです。なので、死亡事故も多かった。一方、ボディーが柔らかいと、ボディー自体はグシャッと潰れるものの、そこで衝撃を吸収してくれるので、中の人への影響は少なくなります。ジルコニアに負荷を与え続けると歯根がダメになる原理と同じです。
――アレンさんは土台については言及していましたが、歯根に関しては特に何も言っていなかったので、歯根が折れるまではいっていなかったかもしれません。
きぬた 土台がそもそも「浅かった」ので、土台がグラついたという面もあるのではないでしょうか。実はこれ、不幸中の幸いなんです。土台が深かったらその衝撃がより歯根に響いて、折れていたと思いますよ。
――結局、アレンさんは、土台ごと抜けた上の歯の部分は、土台ごと作り直し、ジルコニアをスーパーボンドで固定したそうですが、それは正しい治療法と言えるのでしょうか。
きぬた アレンさんは、サメのようになった小さな歯が「ボロボロ崩れちゃって」と書いていたので、歯根状態になっているとみられます。そこに自分の歯と近い、けれど少しだけ内側に入れた土台を作り、そこに「仮歯」を被せて様子を見るのがいいと、僕は思いました。もしそれで調子が悪いならば、さらに土台と仮歯を調整していき、問題ないとなったら、正式な歯を取り付けるんです。歯根があるのだから、土台を何度も作り変えればいいのではないでしょうか。
また、彼は、前歯部分のジルコニアの裏側を少し削ってもらったとも書いていましたが、それは、上の前歯と下の前歯がクローズ状態となっている噛み合わせの当たりを、弱くするのが狙いでしょう。歯の動きに多少、遊びができるようにしたわけです。確かに急場をしのぐにはその方法しかありません。しかし、それは同時に奥歯への負担が大きくなることにもつながります。つまり、前歯に遊びができた分、ものを噛んだときに、奥歯だけしか上下の歯が噛み合わなくなり、異様な感覚が口内に広がっていると思いますよ。
――顎関節症の症状が出たり、頭や首に痛みが走るようになった原因は噛み合わせの変化なのでしょうか。
きぬた いえ、噛み合わせとの因果関係は証明しにくいですね。顎関節症は、メンタルの不調が原因だとも言われているので、恐らく噛み合わせが急激に変化したことにより、アレンさんの精神の均衡が崩れたのではないかと思われます。