【連載】ホス狂いのオンナたち

ホストにハマる女は「まじめ」になる。引きこもり風俗嬢が出会った「ホスト・コミュニティ」

2019/04/13 17:00
せりな

SM風俗店で稼いだお金をホストで使い、無一文で帰る生活

 ユカは普通のOLだった。初めてホストクラブに行ったのは大学4年生、就職が決まった後の夏休みのことだ。取得すべき単位もあとわずか、残すは卒論と卒業のみというときに、ユカは初めて歌舞伎町のホストクラブを訪れた。初回でいくつかの店を体験し、その中からお気に入りの担当を見つけて、何回か飲みに行ったという。就職するまでのモラトリアムの一環――ちょっとした遊びのつもりだった。

 そして、そのときは遊びのままで終わっていた。いや、火遊び程度で済んだと言っていいのかもしれない。就職をしてからしばらくは、ホストはおろか歌舞伎町へ行くこともなかったという。

 そんな彼女が次にホストクラブを訪れた日のことを、私は深く知らない。なぜなら、私はユカがすでにホス狂いアウトバーンを爆走しているさなかに、知り合ったからだ。SM風俗店の同僚として。すでに賢明なる読者諸兄はお気づきかもしれない。そう、愉快で愛おしいホス狂いの友人たちとは、ほとんどくだんのSM店で出会っている。

 この店は、東京で最大規模のSMチェーン店だった。3年前くらいまでは、店は「ホス狂いの登竜門」と呼ばれていた。鯉もこの店で働けば竜になる、と。当然、ホストたちも存在を認知していて、店名を言うと初回の待遇が少し良くなる、とまで言われていたのだ。

 私やホス狂いの友人たちが所属していたのは新宿支店。事務所は、歌舞伎町のホテル街の最奥。仕事が終わったら最短3分後にはホストクラブにピットインできる。フェラーリもびっくりの早業である。つまり、ホス狂い的には最高の立地だ。なんなら、仕事の待機時間にもホストクラブへ行ける。歌舞伎町で稼いだお金をすぐ近くのホストクラブで使って一文無しで帰宅、なんて子も珍しくなかった。地産地消である。毎日がゼロからのスタートだ。


 そう書くと、いいことのように耳に響くが、もちろんそんなことはない。「まずはお金を無事家に持って帰るところから始めよう」とは、SM店長の言葉だが、よく言ったものである。この店の話も機会があれば書きたい。

歌舞伎町セブン