サイゾーウーマン芸能テレビドラマレビュー『I”s』『ゆうべはお楽しみでしたね』岡山天音、情けない若者を演じる独自の存在感 芸能 ドラマレビュー 『I”s』『ゆうべはお楽しみでしたね』岡山天音、情けない若者を演じる独自の存在感 2019/03/04 21:00 成馬零一 ドラマレビュー 『I”s』(BSスカパー!)公式サイトより 今クールの連続ドラマを見ていると、岡山天音が出演する作品が3本もある。1本はすでに終了している『ゆうべはお楽しみでしたね』(MBS系)。オンラインRPG「ドラゴンクエストX」を楽しんでいた男女が、同棲することになるラブコメディだ。 岡山が演じたのはアニメショップで働く、さつきたくみ。ゲーム内では「パウダー」というかわいいキャラクターを使っている。そんなたくみにルームシェアを持ちかけたのは、ゲーム内ではマッチョで男らしいキャラのゴロー。実は、ゴローを操作しているのはネイルサロンで働くおかもとみやこ(本田翼)というおしゃれな女性だ。学生時代に好きな人から振られたトラウマを抱えるたくみは女性が苦手だったが、サバサバしたみやこと暮らすことで、少しずつ変化していく。ドラマは淡々と2人の日常を描いているが、結果的にたくみの成長物語となっているのが見どころだろう。 たくみのような繊細な内面を抱えた情けない青年を演じさせると、岡山は抜群にうまい。昨年12月末にBSスカパー!でスタートして、3月8日より後半話が放送され『I”s』で演じている主人公の少年・瀬戸一貴もそういう存在だ。本作は「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1997から2000年に連載されていた桂正和の同名漫画をドラマ化したもの。『電影少女』(同)などで知られる桂の漫画は、思春期の男の子がドキドキする少女を色っぽく描くことに定評がある作家で、ドラマ版でも白石聖が演じるヒロイン・葦月伊織を筆頭に、かわいい女の子が次々と登場し、ウブな一貴は翻弄される。 岡山が演じる一貴は、“逆走くん”と劇中では言われており、自分の気持ちを素直に出せず好きな女の子にキツくあたってしまう。でも、根っこは優しい少年で、そういう思春期の男の子が持つ、ちぐはぐな感情を、岡山は丁寧に演じている。また、一貴の中には繊細な優しさと、キレると何をやらかすかわからない暴力性が同居しているが、特徴的なタレ目と離れ目が、そのときは不気味に見え、迫力と転じることがある。今は優しい青年役が多いが、変質者や殺人犯の役を演じたら、さぞかしハマることだろう。 この2作では、やや自意識をこじらせためんどくさい内面を抱えた男を演じているが、『デザイナー 渋井直人の休日』(テレビ東京系)で演じる杉浦ヒロシは人当たりのいい好青年だ。 本作は、光石研が演じるデザイナー・渋井直人を主人公としたドラマで、ヒロシは渋井のアシスタント。今時の若者らしく、失礼なことをズケズケと言うこともあるが、渋井のことを尊敬しており、渋井も大事な仲間だと思っている。つまりおっさんから見た、愛すべき若者とでも言うような存在で、第6話では渋井と杉浦の仲が深まるシーンも描かれており、3作の中では一番ハートウォーミングで見やすい作品だ。 これら作品での描かれ方を見ると、どこか頼りないが繊細で優しい10代後半〜20代前半の若者といえば岡山天音というイメージが定着しつつあるのがわかる。 次のページ 『ひよっこ』で演じた素朴で情けない青年 12次のページ 関連記事 神尾楓珠、伊藤健太郎、ジャニーズWEST・重岡大毅――今年ブレークしそうな若手俳優8人『レ・ミゼ』『モンテ・クリスト伯』をまっとうした、ディーン・フジオカの“異物感”『アンナチュラル』『宇宙を駆けるよだか』……2018年ドラマ名シーンベスト3を選出瀬戸康史、『透明なゆりかご』由比院長で完成した『あさが来た』以降の男性像志尊淳、『トドメの接吻』『女子的生活』で証明した“実力派若手俳優”の力量