サイゾーウーマンカルチャー大人のぺいじ官能小説レビューセックスでマウントを取る女の“友情” カルチャー [官能小説レビュー] セックスでマウントを取る女の“友情”――対極にある女性同士の歪んだ関係を描く「女友達」 2019/02/11 19:00 いしいのりえ 官能小説レビュー 『不倫――罪の媚薬』(双葉社) 女の友情というものは、脆く儚い印象を受ける人も多いかもしれないが、掘り下げると非常に興味深い。たぶん男性同士の友情ではあり得ないだろう、歪んだ表現の「情」が含まれるからだ。 例えば、女性同士の友情だと「マウント」が頻発する。スキルの高い男性と交際したり、結婚をすることで上位に立ち、マウントポジションを取ることで友情が成立することも少なくない。 女性の人生にとって決定的なポイントとなる結婚、出産などは、女同士の友情を育むための重要な要素となる。どういった男性と結婚し、どこに新居を構えて子をもうけ、どういった育児をしていくのか――常に女同士は上位を取る争いを続けながら友情を育んでいくものともいえるだろう。 そして、マウントを取るポイントのひとつは「セックス」である。特に、結婚後も夫と充実したセックスライフを送っているということは、妻になってからも「女」として求められるという勲章となるのだ。 今回ご紹介する『不倫—罪の媚薬』(双葉社)は、あらゆる不倫シーンを描いた8作の短編集である。中でも女性にお勧めしたいのが、女の友情とセックスを描いた「女友達」だ。 主人公の寿々と比奈子は学生時代からの親友で、お互いが大人になってからも頻繁にランチやお茶をしている仲だ。容姿に恵まれている2人だが、異性関係やセックスに対しては対照的である。もともと男性に対して慎重である寿々に対して、奔放な比奈子。2人目の男性である財務省のキャリアと結婚し、家庭に入った寿々に比べて、比奈子は2年たらずで離婚し、現在は保険会社でトップクラスのセールスレディとして活躍している。 久しぶりに会った彼女たちの話題は、セックスだ。寿々は初めての男性とのセックスでオルガズムを経験したが、夫となった高梨とのセックスは、以前の恋人ほど情熱的なものではなかった。夫とのセックスに対して、さほど不満はなかった寿々だが、近頃は夫があまり彼女を求めなくなってきたのだ。 互いに酔いが回ってきたところで、比奈子は寿々にある動画を見せる。その画面にはいやらしく腰をくねらせている男女の動画があった――1年間もセックスレスである寿々にとって、その動画は刺激的だ。ディスプレイに釘付けになっていると、比奈子はワンピースの裾に手を忍ばせてきて――。 貞淑で淑やかな雰囲気を持ち、セックスレスながらも平穏な結婚生活を送る寿々を壊したくなる比奈子。対極にある女同士が醸し出す歪んだ友情は、読み進めるたびに清々しさを感じる。そして、相手を壊すことで、さらに友情が深まるところも女同士の友情の面白いところでもあるのだ。 (いしいのりえ) 最終更新:2019/02/11 19:00 Amazon 不倫 罪の媚薬 (双葉文庫) それは本当に友情なの? 関連記事 男性の官能小説家は意外にエロくない!? 業界をチラ見できる『人妻と官能小説家と……』人恋しい季節に心を温めてくれる官能小説『未亡人酒場』が描く人間模様飛田、円山町、町田……かつて紡がれた男女の交わりに思いを馳せる『青線~売春の記憶を刻む街』人妻が溺れる“不倫”の狂気——現実以上に激しいセックスを描く『私のことはほっといて』セックスレスの主婦が中年男のマッサージで女を解放——『千年萬年』の上品な官能表現 次の記事 『トレース』クズ男・石垣佑磨が爆誕 >