仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

社会学者・古市憲寿氏が、テレビで売れっ子なワケ――「カネより友達」発言に感じた甘さ

2019/01/10 21:00
 
 
 
 
 
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なかなか楽しいお店だった。 #八宝楽亭 #happolati

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 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「結局、友達じゃないですか?」古市憲寿
『今夜くらべてみましたSP』(日本テレビ、1月1日)

 番組名は失念したが、オードリー・若林正恭が、かつて「ほかに本業があってバラエティに出ている人はずるい」という意味の発言をしていたことがある。


 芸能人が芸能人にかみつくと、番組は瞬間的には盛り上がるかもしれないが、芸能界のチカラ関係に巻き込まれ、格下の方に仕事がなくなることにもなりかねない。しかし、例えば、西川史子のように、医学といったほかの仕事がある人は、失業の危機におびえないでつっこんでいける。その結果、そういう人が芸能人として評価されることが納得いかないというような話だった。

 若林が言うところの「ほかに本業がある人」で、今、最も評価が高いのは、古市健寿氏だろう。野田内閣、安倍内閣で懇親会メンバーに選ばれた気鋭の社会学者だが、最近では情報番組やバラエティ番組に多数出演しており、初の小説『平成くん、さようなら』(文藝春秋)では芥川賞候補にノミネートされるなど、マルチに活動を続けている。

 『ボクらの時代』(フジテレビ系)で、作家の林真理子センセイ、新潮社の出版部部長・中瀬ゆかり氏と鼎談に臨んだ古市氏は、『とくダネ!』(フジテレビ系)にコメンテーターとして出演し続けるわけを「バイトみたいに、『この日からこの日まで海外に行くんで』とか、自由にシフトを組めるんですよ」と、テレビ出演に意気込んでいるわけではなく、気軽なバイト感覚だと説明した。

 気負いがないせいだろうか、サッカーのワールドカップ直前には、フジテレビが中継をするにもかかわらず、同番組で「僕は、ワールドカップは見ない」と発言し、話題を呼んだ。

 テレビでは、どうしてもMCの意向に沿った発言をすることが求められるため、古市氏は空気が読めないかのような印象を与える。しかし、トータルで考えると、古市氏の発言がネットニュースになれば、本人や番組の名前があちこち拡散される。また、芸能人でないことを考えると、ギャラもそこまで高くないだろうし、芸能人ではないわけだから、芸能界のしがらみにとらわれなくて済む。となると、古市氏は、安い投資で番組を宣伝してくれ、かつ安全という、ある意味、一番の番組思いの青年と言えるのではないだろうか。


 また、古市氏がリア充志向でないのも、時代に即している。かつて古市氏は『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、「子どもも性行為も汚いから、嫌い」と発言して物議を醸したことがある。学者がテレビに出て、芸能人の彼女でも作ろうものなら、調子に乗ったリア充扱いされて、叩かれそうだが、この発言が本当なら、女性との交際は無理だろう。古市氏に好感を持つ若者の視聴者は多そうだ。

 さらに、古市氏の魅力の1つとなっているのが、彼が男性であることではないだろうか。古市氏は『保育園教育義務化』(小学館)という書籍を出版している。日本には三歳児神話があるため、「子どもが3歳になるまで、母親がずっとそばにいるべき」という主張が蔓延し、そのせいか保育園に子どもを預けることを、いまだに「かわいそう」とみなす人はいる。そういった主張に、女性の学者やママタレントたちが異議を唱えてきたが、男性の学者がこのエリアに立ち入るのは、非常に珍しいことではないだろうか。研究者の古市氏は、データをもとに、保育園での良質な教育が子どもに充実した人生をもたらすと著書で繰り返し書いており、単なる個人の意見でないことに救われた女性は多いだろう。

 男性と女性がまったく同じ主張をしても、受け止められ方は同じとは限らない。例えば、日本は料理などの家事を女性がすべきものという刷り込みが強い国だが、「女性だからといって、料理をしなくていい」と女性が言うのと、男性が言うのでは、女性からの好感度が高いのは、後者ではないだろうか。女性が「女性だからとって、料理をしなくていい」と言った場合、その発言を聞いた女性は「この人はそういう意見なんだな」と受け止める。しかし、男性が「女性だからといって、料理をしなくていい」と言った場合、それは単なる意見を超えて、「自分は女性に料理などの家事の献身を求めない、フラットでリベラルな人間である」という人格のアピールにもなるからである。

平成くん、さようなら