絵本/児童書の“萌え絵”論争はなぜ白熱する? 「萌え絵」「マンガ絵」のボーダーを考える
まず、ときまつ氏は、「『せかいめいさくアニメえほん』シリーズの絵は、萌え絵ではなく『子ども自身が飛びつく絵』」とする河出書房新社の主張について、「その通りだと思います」と見解を述べる。
「同シリーズの絵は、今のマンガ、特に少女マンガの絵。現在は、少年マンガに登場する少女キャラクターも、ああいった絵です。萌えキャラと少女マンガのキャラクターというのは、見た目は確かに似ていますが、まったくもって違うものだと言えます」
ときまつ氏は、「萌えキャラ」と「少女マンガのキャラ」のあり方を踏まえた上で、萌え絵と少女マンガ絵の違いについて持論を展開する。
「少女マンガのキャラクターは、主な読み手である女性が感情移入できるキャラ。一方で、萌えキャラは、女性より主に大人の男性を興奮させるように作られています。絵的に見ると、少女マンガのキャラと萌えキャラは、顔は同じなのですが、首から下のスタイルやファッションを見るとまったく違うことがわかります。少女マンガのキャラは、ストーリーに沿ったスタイル/ファッションをしていて、たとえ恋愛マンガの主人公でも、好きな男性に対し、可愛らしさや恥じらいは見せますが、『私は胸が大きいのよ!』とアピールするようなスタイル/ファッションで、色気をちらつかせることは基本的にありません。一方で萌えキャラは、ストーリーに沿っているというより、色気を見せることを目的とするスタイル/ファッションをしているのです。例えば、胸が大きかったり、“見えそうで見えない”胸元の開いた服やミニスカートを着用しています」
当然、少女マンガのキャラがミニスカートをはいているケースもあるが、「でもそれは、『パンツを見せるため』のものではないということです」。
「マンガは1つの作品として売るものですが、萌えキャラはそのキャラ自身を売るもの。その違いでしょう。今回、京都精華大学の学生に、萌えキャラや萌え絵についてどう感じるか、アンケート調査を取ったのですが、女子学生の中には、萌えキャラや萌え絵を『男性に媚びている』『可愛いと思うけど、好きじゃない』とする人も少なくありませんでした」