インタビュー

「セックスレスだけど子どもが欲しい」は間違いなのか? 不妊治療専門病院の医師に聞く

2018/12/08 16:40

「セックスレス」と「夫婦関係が破綻している」は違う

――セックスレス夫婦が増加の一途を辿る中、「セックスレスだけど妊娠希望」という方もいるかと思うのですが、いかがでしょう。

小山 結構いますよ。セックスレスにもいろいろな原因があって、タイミングが合わないというもののほかに、まず、結婚して十年近く年月がたっていてセックスから遠ざかっているケース、また「女性側が痛みを感じてしまう」「男性側が膣内射精障害」といった性交障害があるケースがあります。そういった方々が、「セックスレスだけど妊娠希望」と、来院されています。

――性交障害の方は、まず「治して」から自然に妊娠されることを希望するのではなく、治さないまま、人工受精を希望されるのですか。

小山 いえ、皆さん最初は自然に妊娠することを望んでいます。しかし、“自然なセックスができるように”という指導が、我々の施設ではできないんです。恐らく、そういった役割を担うのはセックスカウンセラーの方だと思うのですが、日本ではあまり見かけないので、人工受精を選択するというわけです。ただ、最初は「ご夫婦でできる努力をしていきましょう」ということで、タイミング法と人工受精を一緒に行うことを提案していきますね。

―― 一方、「タイミングが合わないから」「セックスレスの状態が長かったから」セックスレスになったという方は、自然に妊娠することもできるわけですよね……。


小山 はい。でも、「セックスレスだから人工受精したいです」と、来院されます。セックスレスにはいろいろな理由もありますから、我々も、あまりその点を掘り下げることはありません。「セックスできないのに夫婦と言えるのか?」と感じる方もいるかと思いますが、病院に行くことを選択した方は、そのあたりは割り切っていらっしゃいますよ。「セックスレス」と「夫婦関係が破綻している」のは違う、夫婦はセックスありきの関係ではないと、私は思いますね。実際に、来院されるセックスレス夫婦の方を見ていても、お互い治療に協力的ですし、「仲がいいな」と感じています。

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