【連載】美容整形Dr.高須幹弥に訊く!

「舌回し」「リンパマッサージ」「口体操」は効果ある!? “ほうれい線消し”の都市伝説をDr.高須幹弥に訊く

2018/11/05 21:00

【第74回】「どうしてほうれい線ができるのか、教えて高須幹弥センセイ!」

 老けてみえる“ほうれい線”は、女性の敵と言っても過言ではないはず。そのためか、表情筋を鍛える舌回しや口の体操、顔のむくみをとってほうれい線付近の凹凸をなくすリンパマッサージなど、世の中にはさまざまなほうれい線消しメゾットが飛び交っています。でも、それって本当に効果あるの? 高須クリニック名古屋院院長の高須幹弥先生、ほうれい線にまつわる都市伝説の数々、真偽のほどを教えてください!

■都市伝説の真偽はいかに?

 都市伝説の真偽をジャッジする前に、まずはほうれい線ができるメカニズムからお話したいと思います。

 頬のあたりにメーラーファットという脂肪組織があるのですが、老化で下がってくると、頬がたるんでほうれい線にかぶさり、シワを深くしてしまいます。加齢とともにほうれい線が深くなるのはこのためです。また、ほうれい線は表情ジワでもあるので、笑ったり、口角をあげたり、表情をつくることでも深くなります。ダウンタウンの松本人志さんや渡辺謙さんなどの眉間を思い浮かべていただくとわかりやすいのですが、表情ジワは同じ表情を繰り返すほど深く刻み込まれていくんです。なので、ほうれい線が刻まれる表情をすればするほど、深くて消えないシワになっていきます。そのため、ほうれい線は、年齢を重ねた人や、メーラーファットが大きく発達している人、表情をよく使う人ほど深くなりやすいといえます。


 そのようなメカニズムを基に都市伝説をジャッジすると、まず、「大きく口を開いて『あいうえお』と発音する」方法など、過度に口を動かすトレーニングは、繰り返すことでシワが刻み込まれて、かえってほうれい線を深くしてしまうといえるでしょう。

 ただ、この方法の本来の目的は、恐らく表情筋を鍛えて、メーラーファットの下垂やほうれい線周りのたるみを防ぐことかと思います。表情筋トレーニングとして、「口を閉じて舌を回し、表情筋を刺激する」などいくつものメゾットが紹介されているし、専用器具もありますもんね。とはいえ、表情筋は骨格筋とは作りが違うので、筋トレの効果はあまり期待できないんです。腕や脚など必要に応じて強くしなければならない部位にある骨格筋は、骨と骨についていて、鍛えるほど盛り上がりますが、表情筋は柔らかいところと柔らかいところについているので、鍛えても骨格筋ほど発達するものではありません。噛むために使う筋肉は骨格筋で、硬いものを噛むことで鍛えられるので、エラの部分が太い人は大勢いますが、顔全体が筋肉でムキムキの人なんて見たことないでしょ(笑)? そんなわけで、トレーニングや器具などで表情筋を鍛えることに、ほうれい線を消す効果があるのかは、はっきり言って謎ですね。

 次に、「リンパマッサージで顔のむくみをとり、凹凸をなくしてほうれい線を消す」方法ですが、人間のカラダは60%が水分なので、マッサージを続ければ一時的に顔の水分を移動させられるものの、すぐに戻ってしまうので、ほうれい線を消すほどの効果はないと思います。それに、顔はむくんだり太ったりしているときの方が、肌が張ってシワが目立ちにくくなるので、むくみをとることで肌の張りがなくなってたるみ、かえってほうれい線が深くなってしまう可能性もあります。ただ、メーラーファットが大きく、ほうれい線にかぶさるような人は、むくんだり太ったりしている方がほうれい線が目立つので、そのような人には一時的な効果が期待できるかもしれませんね。

 どんな都市伝説も、例えば、治療を受けた人と受けていない人の比較とか、顔の片側にだけに施術した左右比とかで、100人分くらいの経過を1年間観察した結果データを基に「効果がある」としているなら信ぴょう性があるけれど、どの方法もそのようなエビデンスが出ていないんですよね。そのため、効果があるかわからないというのが実際のところですが、メカニズムなどから考えると、ほとんどのものが効果はないと言えると思います。

達人 吉沢久子 老けない 生き方、暮らし方―軽やかに、自由に、自分らしく 「ひとり」を楽しみ、慎む