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『ブラックペアン』嵐・二宮和也に拍手喝采、イラつかせる“チンピラ演技”の魅力とは

2018/05/01 21:00
『ブラックペアン』(TBS系)公式サイトより

 TBS系「日曜劇場」(日曜午後9時)で放送されている『ブラックペアン』を見て拍手喝采した。嵐・二宮和也の“チンピラ演技”が帰ってきたからだ。

 本作は『チーム・バチスタ』シリーズ(フジテレビ系)で知られる海堂尊の医療小説『新装版 ブラックペアン1998』(講談社)をドラマ化したものだ。舞台は東海地方にある東城大学医学部付属病院。心臓手術の権威である外科教授・佐伯清剛(内野聖陽)がいるため、心臓外科としては世界的権威とされる同院には、「オペ室の悪魔」と呼ばれる天才外科医・渡海征司郎(二宮)がいた。

 渡海は、論文を提出しないためヒラの医局員だが手術の成功率は100%。毎回、執刀医ではなく助手として手術に参加し、ほかの医師が失敗した時に代わりに手術を行う。代行する際に多額の金を担当医に請求するため「患者を生かして、医師を殺す」と評されている。そんな渡海の姿を、研修医の世良雅志(竹内涼真)の視点から描く作品だ。

 放送前は、よくある医療モノと思いあまり期待していなかったものの、二宮が登場するとドラマの空気がガラッと変わり驚いた。

 渡海を演じる二宮の口調は喧嘩腰のため、見ている人をイラつかせる。特に、手術に失敗して精神的に追い詰められている医師に対し、追い込みをかける姿は本当にひどくてチンピラそのものだ。

 国民的アイドルグループ・嵐のメンバーとしてバラエティや歌番組に出演している時、二宮が人を食ったような悪態を取ることが時々あるが、それを100倍悪くした感じだ。同時に俳優としての二宮の魅力は、「こういうチンピラ感だよなぁ」とあらためて思い出したのだった。

 演技が生々しいがゆえの問題

 二宮は、2000年代に故・蜷川幸雄が監督した映画『青い炎』(2003)やクリント・イーストウッドの映画『硫黄島からの手紙』(06)に出演。テレビドラマでは巨匠・倉本聰が脚本を手がけた『優しい時間』(05)『拝啓、父上様』(07/ともにフジテレビ系)に出演し、ベテランの映画監督や劇作家から絶賛されていた。一昔前の若者が抱える鬱屈や焦燥感を演じさせたら、当時の二宮の右に出る者はいなかったのだ。

 その一方で、宮藤官九郎脚本の『流星の絆』(08、TBS系)や、堤幸彦が監督を務めた嵐主演の映画『ピカ☆ンチ』(02)シリーズといった、現代を舞台にした作品へも多数出演し、青春モノの若者役としても並ぶ者がいなかった。

 しかし、10年代に入り、二宮が30代になるとテレビドラマの出演が減っていく。落語家・立川談春の自叙伝『赤めだか』(TBS系)や、夏目漱石の小説をドラマ化した『坊ちゃん』(フジテレビ系)といった単発のスペシャルドラマも悪くはなかったが、ノスタルジーな世界観が前面に出ており、2000年代の二宮を思うと、どこか物足りなく感じた。

 30代を超えた男性アイドルにとって、役選びはとても難しい問題だ。多くは年齢不詳の漫画原作キャラクターを演じるようになっていく中、そういった役を演じるには二宮の演技は生々しすぎた。かといって、年相応の30代男性を演じることもなく、年齢上の違和感が表れない“近過去の青年”という微妙な立ち位置に甘んじていた。

 そんな中、『ブラックペアン』の二宮は、俳優として新しい段階に入ったように見えた。二宮の中にある鬱屈や焦燥感が、青年の持つ青臭ささとしてではなく、医師としての信念・美学の発露として現れていたからだ。

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