「父親は早く死んだらいい」ゴミ屋敷で3年間の家庭内別居の末、離婚した女性の壮絶体験
『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?
第14回 山本裕子さん(仮名・40代)の話(後編)
看護師として勤務していた都内の大学病院の入院患者だった男性と退院後に交際を始め、3カ月で結婚の話に。Uターン就職したいという夫の実家がある東北へ移住したものの、義父母はもちろん、盛大な結婚式を挙げた4カ月後に出戻りした義妹からも冷たい仕打ちに遭う。その後、長男、長女を出産し、一軒家を購入するが、家事も育児もせず、妻をこき使う夫は変わらなかった。自分の両親は結婚を反対していたため、挨拶にも行かずじまいだったが、老後の面倒を見てもらおうと、九州から、目と鼻の先に引っ越してきた。しかし、その実の両親との関係も改善せず、精神安定剤を飲んで泣いてばかりいた。
■夫が、甥の借金の連帯保証人になろうとした
――家庭内別居を3年続けながら、離婚裁判を戦ったそうですね。その発端は何だったんですか?
義妹の息子(夫の甥)が漁協に就職した後、3年前の5月、夫が変なことを言いだしたんです。「保証人になるから、ハンコと印鑑証明持ってこい」って。何のことかと思ったら、「甥が140万円でローンを組んで車を買うらしい。だったら僕が連帯保証人になってあげたい」って。しかもその申込書、“○○ファイナンス”って書いてある。これは明らかにサラ金です。
――親である義妹が買ってあげたらいいのに……。
彼女は息子を産んだ後、親戚のコネでいろいろ仕事していました。だけど続かなくて、家賃を滞納したり、借金取りから逃げるために居留守を使ったりしてたんです。車を買ってあげるお金なんか、彼女にあるはずがない。だから兄である夫が甥の親代わりってことで、車を買ってあげようとしたみたいです。身内愛が強いから。でも、私からしたら、とんでもない話。百歩譲って買ってあげるにしても、中古で十分だし、サラ金を使う必然性もない。下手したら、利息が膨らんで家を取られかねない。だから私、夫に言ったんです。
「連帯保証人になるってことの重さをわかってるの? それとも今後もし甥が『家を買ってよ』って言ったら、家の保証人にだってなるつもりなの? 車よりも10倍20倍の額になるよ」
「なるに決まってるだろ! 俺は親代わりなんだから」
「私は、そこまではできない。自分の子どもが一番だから。あなたがそう言うのなら、もう一緒にはいられない」
「そうですかそうですか。だったら離婚すればいいんですね。僕は弁護士いっぱい知っているんだから」
「保証人になるのも断って!」
そんなとき、当時高3の娘が帰ってきたんですよ。帰宅早々、異様な修羅場です。緊迫感に娘は耐えられなくなって、かわいそうに泣きだしてしまいました。そんな娘を気にかけるどころか、夫は背を向けて電話をかけ始めました。
「ごめんね。保証人になれないんだ」
すごく申し訳なさそうに、電話で言ってるんです。そのときからです。家庭内別居が始まったのは。