サイゾーウーマンカルチャー漫画レビュー女子マンガに現れた「クソ男キャラ」4選 カルチャー 女子マンガ研究家・小田真琴が振り返る 2017年女子マンガに現れた「クソ男キャラ」4選! “絶望”を読者に見せる時代に? 2018/01/06 19:30 小田真琴マンガレビュー 2017年、芸能界では宮迫博之を筆頭にした芸人勢から大御所俳優の渡辺謙まで多くの著名人の不倫が続々と発覚し、世間を騒がせました。また、不倫スキャンダル以外にも、人気俳優・小出恵介の未成年淫行による無期限活動休止や、女優・高畑淳子の長男で俳優の高畑裕太が強姦致傷の容疑で逮捕されるなど、衝撃的かつ許しがたい事件もありました。 そんな、世の女性に憤りを感じさせるような、多くの“クソ男”が誕生した芸能界ですが、マンガの世界にもそうした男キャラクターは多数登場する……。そこで、17年にマンガ界で登場した問題男たちをご紹介。 サイゾーウーマンにて「女子マンガ月報」を連載中、最近では12月に放送された『マツコの知らない世界』(TBS系)に出演し、女子マンガの世界をマツコに熱く説いた、話題の女子マンガ研究家・小田真琴氏が厳しくツッコミます! 『透明なゆりかご(1)』(講談社) ◎『透明なゆりかご』妻の妊娠を期に豹変……変化に弱いマザコン男 「少女マンガには登場しなかったようなクソ男が、大人向けの少女マンガ≒女子マンガにはゴロゴロ登場します。希望とともに、絶望も思い知らせてくれるのが女子マンガですからね。白馬の王子さまだけを描いていればよいという時代は終わったのです」 たとえば、生と死が交錯する産婦人科の現場を見習い看護師の目線から描いて話題となり、累計300万部のベストセラーとなった『透明なゆりかご』(講談社、沖田×華)。最新刊の6巻にはこんな男が登場する。 「ある若い夫婦のエピソードです。妻の妊娠が判明して、当初は喜んでいた夫が、妻のつわりが始まった途端にへそを曲げて、『だからそんなに太るんだよ』とか『妊娠したらこんなに変わるなんて思わなかった。別人みたいだよ…』などと言い始めやがるんですよ」 言動は次第にエスカレートし、軽くではあるが遂に妻はおなかを殴られる。身の危険を感じた妻は友人宅へ避難するのだが、そこに乗り込んできた夫と義母は、反省の弁を述べるどころか、「…お前 浮気してるだろ……」。義母も義母で「私も悪阻は酷かったけどアンタみたいになったことないよ! 愛情が無くなったから 怠けて太って息子を突き放すようになったんだろ?」と妻を責め立てる。 「変わっていく妻の体に戸惑うばかりで、父親になる心の準備がまったくできていなかったクソ男ですね。しかもマザコン。最低です」 しかしそんな男も最初は優しかったのでは? 男の本性を見分ける術はないのだろうか。 「こういう手合いは相手が自分の望むとおりであるうちはおとなしくしているのですが、そうでなくなった瞬間に牙を剥きます。言うなれば変化に弱いクソ男。人の関係性や環境は常に変化するものなのですから、常に自分にとって理想の状態があるなどと考えているのは甘えでしかありませんよね」 『凪のお暇 1』(秋田書店) ◎『凪のお暇』コンサバ女装を強要する圧倒的なモラハラ男 口コミで人気が広がり、11月に発売された2巻は即完売、すぐに重版がかかったという『凪のお暇』(秋田書店、コナリミサト)。 人畜無害のコンサバOLに擬態し、場の空気を読みまくって生きてきた大島凪(28歳)が、過呼吸で倒れたことをきっかけに会社を辞めて裸一貫出直すというリセット断捨離ラブコメだが、ここでもクソ男が登場。 「凪の元同僚にして元彼である我聞慎二です。こいつはせっかく人生をやり直そうとしている凪に呪いの言葉を投げかけるのですね。クセ毛を隠すために無理矢理かけていたストレートパーマをはずした凪の頭を見て『おまえブスになったなあ』とか、『28年間生きてきて骨の髄まで染みこんだもんを 物捨てたくらいでリセットできてたまるか いいか凪 おまえは絶対変われない』とか。これは圧倒的にモラハラです」 一方で、慎二が心底凪に惚れていたからこその言動だったと作品中では描かれているが……。 「小学生男子じゃあるまいし。だいたい彼が愛しているのは、ストレートパーマをかけ、コンサバOLに擬態し、彼に従順だったかつての凪です。本人はそれが嫌で逃げ出したのだから、すでに2人は一緒にいるべきではありません。自分を規定するのは自分であるべきで、他人ではありません」 ◎女を支配しようとする男たち 左から、『先生の白い嘘(1)』(講談社)『きみが心に棲みついたS 1』(同) ほかにもクソ男が登場する女子マンガは多数あるが、その究極とも言うべきが、11月に完結したばかりで、男と女の性の不平等をえぐるように描き話題となった、『先生の白い嘘』(講談社、鳥飼茜)の早藤と、1月16日よりドラマ版が始まる『きみが心に棲みついた』(講談社、天堂きりん)『きみが心に棲みついたS』(祥伝社)の星名だ。 「早藤は相手をレイプして心身ともに支配しようとするクソ男です。星名は言葉で心身ともに支配しようとするクソ男。共にキーワードは“支配”です。早藤ですら目的は性欲の充足ではなく、支配なんですよね」 DVだったりモラハラだったり、実はこうした話は私たちの身近にもざらにある。 「当事者に限って、『そんなな大げさなものじゃないかも…』って思い込みがちなのですが、それは絶対違います。冷静に客観視するためにも、マンガでクソ男を知っておくことは、必ず役に立つことでしょう」と小田氏はいう。 「白馬の王子様だと思った人が実は……」と泣かないためにも、女子マンガから“絶望”を垣間見て、現実を見据えられるよう18年を過ごしたい。 最終更新:2018/01/06 19:36 関連記事 『東京タラレバ娘』で“説教芸”に興じる東村アキコは、愚かなお笑い芸人のようだ2015年まんが界事件簿――【東村アキコ『ヒモザイル』騒動】が象徴したヒエラルキーオンナを描く漫画家・鳥飼茜に聞いた、女社会の“本質”と母親という女について『地獄のガールフレンド』で“いま”の問題を描く、鳥飼茜の「視点」の強さ相次ぐマンガ誌休刊の中、“売れるマンガ”の役割と少女マンガ誌の危ういスタンス 次の記事 『プリンシパル』鑑賞券プレゼント >