子どもといると気が狂うから保育園に入れたい。ママ同士を対立させる“仮面保活”の実態
少し前にネットを中心に炎上をした牛乳石鹸のWEBムービーや、ムーニーのおむつのCM。どちらの動画にも共通して描かれているのが、女性が主体となって育児をこなしている「ワンオペ育児」と呼ばれている状況だ。東京で結婚したものの、親が遠方に住んでいるために育児の協力を頼めないケースや、義母とうまくいっていないため、自力で産後を乗り切らなければならないケースも、現代では珍しくないといえる。そんな「里帰り出産」ができないママにとって、慣れない育児のストレスや、言葉も通じず泣き続ける乳児と狭いマンションの部屋で四六時中一緒にいるという状況は、思わずイライラして手が出てしまうことがあっても不思議ではないのかもしれない。
典子さん(仮名)は、テレビなどで幼い子どもを母親が虐待したというニュースを見て、他人事のように思っていた。しかし「自分も、まだ1歳にもならない娘を、叩いてしまったことがあります」と語りだした。
「育児休暇中、夫の帰りが遅いと、娘と2人きりの状況になり、余裕がなくイライラしがちでした。ものに八つ当たりすることもよくありましたね。夫にLINEでメッセを送り続けても、既読がつかず、『自分一人だけで育児をしている』という不満が募り……そんな時、まだ赤ちゃんだった娘が私のスマホを取り上げて放り投げ、運が悪いことに、ちょうど動こうとしていた私の右目に角が直撃したんです。それで、発作的に娘に手をあげてしまいました。あの時はどうかしていたと思いますが、子どもと締め切りの部屋で四六時中一緒にいると鳴き声で気が狂いそうでしたね」
実は、典子さんの夫は大手のゼネコンに勤務している建築士。出張なども多いため、家も空けがち。子どもが小さいうちは、夫の収入だけで生活をし、専業主婦になることも可能だったそうだが、夫の言い分を無視して保活に励んだという。
「出産前から働いていた半導体などを扱うメーカーの事務に、時短勤務で復帰しました。認可外に通うことになると、収入のほとんどが保育料に消えていくことになるので、認可保育園に預けました。仕事に復職したい理由は、『子どもと一緒にいたくない』から。もちろん子どもはすごく可愛く思えるときもあるのですが、それは保育園に預けて、離れた時間ができたからだと思います。ただ、地元の友人は、私が建築士と結婚をしているのを知っていて、『そこまでして保育園に入れる必要あるの?』って聞いてきました。なかには『0歳から保育園に預けるなんてかわいそう』と言う子もいたんですよ。結局、保育園に預けて働かないと破産しそうな家のママからしたら、私みたいな“仮面保活”はむかつくみたいですね」
本来ならば、どのような理由であれ親が望むならば全入保育ができるのが理想といえる。深刻な保育園不足が、育児を息苦しくしているのかもしれない。