リアルな体験談

「薬物依存症」治療病院の実態とは? 元入院患者が語る、3カ月の“隔離生活”

2017/10/20 15:00
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下村武さん(仮名・28歳)

 タレントの清水良太郎容疑者が覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕された。薬物で逮捕されたタレントといえば、ASKAや清原和博などが記憶に新しいが、特にASKAが保釈後に入院していた薬物依存症治療プログラムのある病院は、大きな注目を浴びた。

 そもそも、薬物依存症治療プログラムとはどういうものなのか? 実際に大麻依存で入院していた経験を持つ男性、下村武さん(仮名・28歳)に話を聞いた。

「大麻を初めて吸ったのは23歳の時でした。夏休みで地元に帰った時に、先輩に誘われたのがきっかけです。その時は『気持ちいい』ぐらいの感覚でしたが、夏休みが終わり東京に戻ると、また吸いたいと思うようになっていました」

 以来、週末ごとに地元へ帰り、先輩や友達と一緒に大麻を吸うようになった。やがて仕事も辞め、地元に戻ってからの2年間、ほぼ毎日大麻を吸い続けたという。そんな状況に焦りを持ち始めたのは、友人の結婚式に出席したことがきっかけだった。

「結婚式に出席して、『自分はこのままでいいのだろうか』と不安になりました。その足で実家に帰り、母親に『大麻をやめられないから、病院に入りたい』と懇願しました」


 下村さんが入院したのは、静岡県にあるS病院だった。

「場所は富士山のふもとにあり、周りは森しかありません。病院は3階建てで、入院患者は2階と3階に収容されます。2階は軽度のアルコール依存症患者、3階にはさまざまな薬物や僕と同じ大麻の依存患者がいます。部屋は男性用の10人部屋が8つ、女性用の3人部屋が3つ、大浴場とトイレは共同でした。3階には鍵がかかっていて、携帯電話の持ち込みどころか、フロアから自由に出入りするのも禁止です」

 入院患者は、一番多い時で約90人いたという。

「半分ほどが生活保護を受けている方で、年齢は30~40代が多いです。最年長は70歳で、最年少の20歳の子は脱法ハーブで入院したと言っていました。女性は6人ほどいました」

では、入院中の治療プログラムは、具体的にどのようなものなのだろうか?


「病院内の生活は、主に入居者同士のディスカッションですね。話し合いをして楽になりましょう……というのが趣旨です。大麻をやっている時のやめられなかった気持ちや、やめた後はどうしたいかなど……。ほかには薬物を断ち切れた人の講演を聞いたり、薬物の勉強会です。プログラムは薬の種類関係なく、皆同じ内容でした。やめる過程でのつらさや苦しさは、僕はあまり感じなかったですね」

薬物依存症の回復支援ハンドブック―援助者,家族,当事者への手引き