「男性がコンドーム、女性がピルで対等」避妊を男性任せにしている日本のセックス
――日本家族計画協会では、緊急避妊に関する電話相談を行っていますよね。
北村 はい。でも、男性から「緊急避妊のできる医療機関を教えてください」と言われた場合、僕たちはパートナーの女性が電話をかけてくるように促します。この薬を飲むか飲まないかは女性の意思です。電話をかけてきた男性はコンドームを使わなかったり、使っていても破れたりしたのかもしれない。だから、大騒ぎをして電話をかけることで自分の責任を回避しようとしているのかもしれませんが、妊娠を継続するかしないかは女性の考え方ひとつなんです。
僕がサイゾーウーマンの読者の方に伝えたいのは、緊急避妊を考える前に、男性に支配されない避妊法を女性として準備しておこうということです。妊娠経験がなく、どうしても妊娠するわけにはいかない人はピルを、妊娠経験があるけどしばらく妊娠を希望しない人は子宮内避妊具/子宮内避妊システムの使用をお勧めします。日本の8割を超える人がコンドームや膣外射精を避妊法として選択している。これが日本の現状なんです。妊娠は男性の体には絶対に起こりません。にもかかわらず、日本の女性たちは避妊を男性任せにしている現実があります。これを変えることが大事で、「コンドームによる避妊に失敗した場合はノルレボ錠を飲みましょう」というのでは、あまりにものんきすぎます。しかし、ピルを飲んでいても、時期によっては3日以上の飲み遅れや飲み忘れがあると緊急避妊を必要とする場合があります。こういうときのための緊急避妊です。
――妊娠は女性の体に起こるものだから、避妊も女性が主体となってするものだということですね。
北村 うちのクリニックに来ているピルのユーザーには、「自分がピルを飲んでいることを男性には言ってはダメ」と言っています。日本の男性は避妊目的でコンドームを使うことをためらいませんが、それは女性が妊娠したら自分に跳ね返ってくる責任を避ける目的で、自分を守るためです。少なくとも、彼女を守るためにコンドームを使っているとはいえません。だから、パートナーの女性がピルを飲んでいることを公言してしまうと、コンドームを使わなくなってしまう。女性がピルを飲んで男性がコンドームを使う二重防御ができて初めて、対等なセックスが可能になります。性感染症予防には定期的な検査、必要に応じた治療が必要ですが、コンドームを使うことは必須です。女性が男性に公言せずにピルを飲んで男性がコンドームをつければ、男性は一生懸命避妊のためにコンドームを使っているという状況になります。それは女性からしてみると性感染症予防につながります。こういう発想が日本には欠けています。避妊指導というのは、このようなことも含め、地道にきめ細かく行っていく必要があるんです。
(姫野ケイ)
北村邦夫(きたむら・くにお)
一般社団法人日本家族計画協会・理事長。産婦人科医。1951年2月23日生まれ。群馬県出身。自治医科大学一期生として卒業後、群馬県衛生環境部に在籍の傍ら、群馬大学医学部産科婦人科学教室で臨床を学ぶ。