『人は見た目』『逃げ恥』ミステリアスな役で物語をかき乱す、俳優・成田凌の存在感
成田凌が出てくるとドラマがざわつく。例えば、この間まで放送されていた『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)。“女子モドキ”を自称する、城之内純(桐谷美玲)たち冴えない理系女子研究員たちが、メイクやファッションといったオシャレの研究をして女子力を高めようと日々奮闘するドラマで、成田が演じたのは城之内があこがれるイケメン美容師の榊圭一。
榊は自分に自信のない城之内にとって王子様的存在で、やがて榊に告白され2人は付き合うことになる。しかし、榊に別の彼女がいることが判明。そこまではよくある展開だが、恋人がいることをあっさり認めた榊は「2人とも彼女ですよ」と、二股を前提として付き合いたいと言うのだ。
これが最終話の手前で起きたのだから、多くの視聴者が「え~!」と、SNSで反応した。正直言うとドラマ自体に関しては、企画先行のバラエティ的作品で、ブルゾンちえみをうまく使いこなせていないことも含めて不満が多かったが、この展開によって、妙な爪痕を残す作品となった。
二股とわかっていながら榊としばらく付き合う城之内だが、榊がパーティに行く城之内のメイクや洋服を選び「理想の美女」に仕上げることで、彼女から主体性を奪っていく姿は、今まで本性を隠していたラスボスの攻撃が始まったという感じで、とても面白かった。最終的に城之内は榊と別れて自立するが、榊が立ちはだかることで「オシャレは自分のためにするのだ」という本作のテーマが、より際立ったと思う。
成田は榊を演じるにあたって、最初から最後までふわっとした同じトーンを保っている。そのことのよって、善人とも悪人とも言い切ることが難しい、何を考えているのかわからない不気味さを倍増させていた。後から考えると、こういう役に起用されるのは、実に成田凌らしいと言える。
例えば、出世作となった『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系、2016年)で演じた、会社員の梅原ナツキも面白い役柄だった。石田ゆり子が演じる女上司の土屋百合のことを好きなのではないか、と物語上で匂わされたまま、最終話で意外な真実が明らかになり、多くの視聴者を驚かせた。
『大貧乏』(フジテレビ系、17年)でも企業犯罪に立ち向かうシングルマザーと弁護士とチームを組む、敵か味方かわからない謎の男・加瀬春木を演じていたが、変幻自在でつかみどころがないミステリアスなイケメンを演じさせたら、今一番面白いのが成田だろう。彼がドラマに登場すると、何かとんでもないことが起きるのではないかと思って目が離せなくなる。