“女医タレント”にこだわる西川史子に見る、「母親の夢を全てかなえる娘」の陰
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「それまで親のいいなりだったのに、その時だけは我を通しました」西川史子
「婦人公論」(中央公論社、6月27日号)
未成年の少女との飲酒、淫行が発覚し、芸能活動を無期限停止となった俳優・小出恵介。
「フライデー」(講談社)において、強姦を主張した少女だが、少女側の“代理人”が金銭を要求したことがわかり、美人局疑惑も持ち上がってきた。こういった性犯罪を伴った芸能人の不祥事が起こると、多くのコメンテーターは、“オトコとオンナどちらが悪いか”について意見を述べる。そんな中、どちらにも立たず、常に事件の本質を飛び越したコメントをしているのが、西川史子である。
6月11日放送の『サンデー・ジャポン』(TBS系)で、西川は「リスクが同じような相手と一緒にいないと、こういうことが必ず起きてしまう」と述べた。これは言い換えると、「週刊誌に出ると自分も困る芸能人と遊べばよかった」という意味であろう。また昨年、女優・高畑淳子の息子、裕太が強姦致傷で逮捕された際(結果的に不起訴となったが)、『ノンストップ!』(フジテレビ系)で、「もったいないの一言ですよね」とコメントした。何がもったいないのかについては述べていなかったが、「あれだけ売れていた裕太が、芸能活動を続けられなくなったこと」と考えるのが自然だろう。この2つのコメントから考えるに、西川の関心事は「芸能人であり続けること」のように思える。
私は過去に(2013年7月15日)西川の著書『女盛りは賞味期限が切れてから』(マガジンハウス)について、レビューを書いた。当時、西川は結婚していたが、結婚の良さについて触れている部分はごくわずかで、代わりに「芸能人であり続けるため」の努力について雄弁だったのが印象的だった。また西川の母親の理論も独特である。同書には、「医者にもなれました。みんなが出たいTVにも出ています。それ以上の幸せを望んじゃだめです」「この結婚を手放すと、修行の場を失って、あなた自身が病気になったりします」とあったが、これはつまり、“人間、いいことばかりは続かない”“女医タレントとしてテレビに出続けたければ、あえて幸福でない結婚を続け、自らに試練を与えよ”と解釈できる発言をしている。
西川が芸能活動に執着するのは、母親も芸能界に興味があったからではないかと書いた記憶もあるが、この推測は当たっていたようだ。6月27日号の「婦人公論」(中央公論社)で、西川は母親について「一時は劇団に入り、映画にも出ています」と述べた。女優のタマゴだった西川の母だが、医師である夫と結婚し、姑に跡継ぎを医師にするのが長男の嫁の務めだとプレッシャーをかけられたそうだ。