歌わなきゃ一流だったのに

シャウトできないブルース・ウィリスに、ナルシストなロバート・ダウニー・Jr……歌手として失敗したスター俳優たち

2017/06/10 19:00

ナル炸裂な歌い方の超人気俳優

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『アリー』では歌いまくっていたロバート

■ロバート・ダウニー・Jr (52)

 映画監督である父の作品に子役として出演し、1980年代には青春映画で名を馳せたロバート。薬物依存で刑務所に入ったが見事克服し、近年では映画『アイアンマン』シリーズで大成功を収め、ハリウッドを代表する大物俳優としてリスペクトされている。

 そんな彼は、12歳のころに始めたピアノ演奏を通して音楽に目覚め、映画やドラマで歌うシーンは全身全霊で熱唱。映画『愛が微笑む時』(93)では国歌を、何度か歌声を披露していたドラマ『アリーmy Love』シーズン4ではポリスの名曲「見つめていたい」を熱唱。エルトン・ジョンの「I Want Love」(01)のミュージックビデオに出演し口パクしたときは「史上最高のナルシスト」と陰口を叩かれ、ミュージカル・コメディ映画『歌う大捜査線』(03)は「ロバートの自己陶酔した歌い方のせいで駄作になってしまった」と酷評された。

 04年11月には、満を持す形でデビューアルバム『ザ・フューチャーリスト』を発表した。しかも、単なる歌手ではなくシンガーソングライターとして、大手レコード会社「ソニー・クラシカル」から気合の入った1作を放ったのだ。収録されている10曲のうち8曲を自身が書き下ろし、ロックバンド「イエス」の名曲「ユア・ムーブ」に、イエスの元リード・ヴォーカリストだったジョン・アンダーソンをフィーチャリングさせるという夢のコラボを実現。ジャズ界の巨匠でベース奏者のチャーリー・ヘイデンをフィーチャーした曲まで収録されている。

 しかし、ロバートのナルシシズム炸裂の歌い方に、彼が歌好きだと知っていた人たちは「やっぱりこの路線か」と溜息。彼の歌声を知らない人は、イメージからはかけ離れた歌声に戸惑い、その結果アルバムは「Billboard 200」初登場121位。アメリカで最も影響力を持つ司会者オプラ・ウィンフリーのトーク番組にも出演してパフォーマンスしたが、売れ行きはイマイチ。評論家のレビューも「歌詞が愚鈍すぎる」「役者に集中した方がよい」と散々なものだった。


 ロバートはその後も、チャンスさえあれば歌を披露しているが、06年に「たぶんもうアルバムは出さない」と発言している。

■デビッド・ハッセルホフ(64)

 1980年代に、主演ドラマ『ナイトライダー』で一世を風靡した俳優デビッド。長身、イケメン、細マッチョと三拍子揃った彼は世界的な人気者となり、歌手デビューの話が持ち上がったのは自然な流れだった。

 85年には、デビューアルバム『Night Rocker』を発売したのだが、アルバムのジャケットは「『ナイトライダー』に登場する車、ポンティアック・ファイヤーバードのボンネットに立ちエレキギターを弾く」というデザインで、明らかにドラマファンにアピールするもの。映画音楽のクリエイターとして名高いジョエル・ダイヤモンドがプロデュースし、当時結婚していたキャサリン・ヒックランドとのデュエットが3曲収録されるなど、話題性はたっぷりだった。

 それなのにこの『Night Rocker』、アメリカでの売れ行きはさっぱりだった。なぜならデビッドが絶望的なまでに音痴だったからである。アメリカではチャートにカスりさえしなかった同作だが、なぜかオーストリアではナンバーワンを獲得。30位にランクインしたドイツでは「アメリカのロック歌手」として爆発的な人気が出て、89年にリリースした『Looking for Freedom』はプラチナム認定までされる大ヒットとなった。


 ちなみに、ドイツで大ブレイクした理由は「ドイツ人が描いている自由でカッコいいアメリカ人」に、デビッドがぴったりとマッチしたからだとされている。ドイツ人同様、日本人にとってもデビッドは「典型的なカッコいいアメリカ人」であり、高い人気を誇ったものだった。

 俳優業をメインに、歌手としての活動も細々と続けたデビッドだが、00年代に入りアルコール依存症が悪化。泥酔状態で床を這いつくばってハンバーグを食べる映像を娘がYouTubeで公開し、世間はドン引き。その後も、酒を飲みすぎて意識不明の状態で発見され死の淵をさまようなど、壮絶な経験をした。

 そんなお騒がせな彼もリハビリに見事成功。ジム通いでたくましい体を取り戻して「還暦過ぎたけど40代のような気分だよ!」とまぶしい笑顔を見せており、往年のファンからは温かい目で見守られている。

 

最終更新:2017/06/10 19:00
『短所は直すな! ダメなところが自信に変わる』
欠点を知られたほうが愛されるってもんよね