歌わなきゃ一流だったのに

シャウトできないブルース・ウィリスに、ナルシストなロバート・ダウニー・Jr……歌手として失敗したスター俳優たち

2017/06/10 19:00

80年代を代表するスーパースターもバリバリの音痴

■ドン・ジョンソン(67)

 『特捜刑事マイアミ・バイス』(1984~89)のイケメン巡査部長ソニー・クロケット役で、爆発的な人気を博したドン。ワイルドさとセクシーさを併せ持った彼は、80年代を代表するスーパースターとなった。行く先々では熱狂的なファンが待ち構え、どこに行っても黄色い声が飛び交う。そんな日常を送っていた彼が「歌手としても頂点に君臨しよう」と思ったのは、ごく自然の流れだったといえるだろう。

 86年9月、ドンはデビューアルバム『Heartbeat』をリリース。ファンは待ってましたと言わんばかりに飛びつき、アメリカで最も権威のあるアルバムチャート「Billboard 200」で最高17位に、シングルカットされた「Heartbeat」は「Billboard Hot 100」トップ5入りする快挙となった。

 伝説的ミュージシャンとして名高いトム・ペティらに楽曲を提供してもらった上で、ウィリー・ネルソン、「ローリング・ストーンズ」のギタリストであるロン・ウッドら超大物ミュージシャンをフィーチャリングさせるという、豪華すぎるこのアルバムが売れないはずはなかった。しかし、売れたは売れたが、アルバムは絶望的なまでに駄作だと言われている。なぜならば、ドンがあまりにも音痴だったからだ。

 一生懸命に歌うという気持ちは伝わってくるのだが、30秒も聞いているとおなかいっぱいになってくる歌声。80年代にはやった機械的なサウンドに押され、うなり声も弱く聞こえてしまう。そもそも歌手向きの声ではないとも評された。


 しかし時代の寵児としてもてはやされていたドンは88年、無謀にもあの大物歌手バーブラ・ストライサンドと「Till I Love You」でデュエット。歌唱力の差があまりにもありすぎて痛々しいと同情された。89年には懲りずにセカンドアルバム『Let It Roll』をリリース。メキシコ版マドンナと呼ばれていたセクシー歌手のユーリをフィーチャリングした「Better Place」も収録したものの、相変わらずの音痴のため、鳴かず飛ばず。その後、歌手として表立った活動はしなくなり、ファンを安堵させた。

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「オレ、音痴だなんて知らなかったよ……」

■ブルース・ウィリス(62)

 サスペンス・コメディ『こちらブルームーン探偵社』(1985~89)で演じた“お調子者の二枚目探偵”でブレイクし、『ダイ・ハード』(88)の“世界一ツイてないけど、タフで使命感に燃えるヒーロー刑事”ジョン・マクレーン役で世界的な大スターとなったブルース。「テレビで売れた役者が映画スターになる」という米ショービズ界での偉業を成し遂げた彼に、できないことなどないと思えるだろう。しかし、そんな彼も音楽界で成功を掴むことができなかった。

 『ブルームーン探偵社』で人気急上昇中の87年1月に、デビューアルバム『The Return of Bruno』を発売。この作品には、ブッカー・T・ジョーンズ、ポインター・シスターズ、テンプテーションズら、R&B界の大御所らが集結し、「Billboard 200」で最高14位に、シングルカットされたポインター・シスターズとのコラボ曲「Respect Yourself」は「Billboard Hot 100」トップ5に入った。

 このアルバムは「今日のロックミュージックに多大なる影響を与えた60年代の伝説的ミュージシャン」という設定のもと制作されており、同名のテレビ映画まで制作(邦題は『ブルース・ウィリスの逆襲』)。マイケル・J・フォックスに、エルトン・ジョン、フィル・コリンズ、リンゴ・スター、ジョン・ボン・ジョヴィら大スターたちがこぞって出演した。ブルースも大観客の前でミュージシャンとして本気のライブ・パフォーマンスを披露し、大きな話題となった。


 このように、ヒットしたにはヒットした『The Return of Bruno』だったが、ブルースの歌唱力に対する評価はすこぶる悪かった。とにかく「歌がヘタ」だからだ。テレビ映画で見せたパフォーマンスも、「シャウトできないし、クネクネした動きが気になって仕方ない」「歌のレベルも最悪だが、ハーモニカもろくに吹けない」「歌手としては楽しめないが、エンターテイナーとして見れば楽しめる」と酷評が相次いだ。米大手芸能誌「People」にいたっては、「ドン・ジョンソンの方がマシ」と評したほど。

 ブルースは89年にセカンドアルバム『If It Don’t Kill You, It Just Makes You Stronger』をリリース。その後も、チャンスがあればステージに上がり歌っているが、オリジナルアルバムを制作するという無謀なことはしなくなった。

『短所は直すな! ダメなところが自信に変わる』