「犬畜生だと思ってた」偏屈オヤジも夢中に――アニマルセラピーがもたらす老後の生きがい
■動物がいるだけで、高齢者は自然な笑顔に
——メンバーの方たちは、どんな気持ちで参加されているのでしょうか?
天野 長く参加してくれている人、最近参加するようになった人、みんなそれぞれいろんな思いでいるのでしょうが、きっとやりがいを感じてくれているんだと思っています。自分の飼っている犬が、「セラピーに行くよ」と言うと、本当に喜んで行くからです。だから、飼い主であるメンバーも生きがいを持って参加してくれていると思います。
——これまで訪問されて、高齢者の方たちはどんな反応が多いですか?
天野 エピソードは本当にいろいろありますが、だいたい動物好きな方は、以前ご自分が飼っていた犬や猫の話をされることが多いです。今まで動物と触れ合った経験のない方、生まれて初めて犬を触るような方は「こんなに温かいんですね」と感動されたりします。ごはんを食べたことを忘れる方が、犬の名前を覚えているということもあります。
それから、これは7~8年前のことですが、ある特別養護老人ホームに伺ったとき、「犬は嫌い」とはっきり拒否する方がいました。それが、何度も伺ううちに、だんだん大丈夫になって触れることができるようになりました。また、それまで自分が育った田舎では犬畜生でしかなかったから、ずっとそう思っていたという方からは、初めて犬を抱いて「こんなに気持ち良いとは思わなかった」と言われたりしました。
また以前、教師をされていたという、絶対に笑顔を見せない、施設のスタッフにも厳しく気難しい性格の方がいました。その方も犬たちと何度も会ううちに、だんだん笑顔が見られるようになったと言って、スタッフさんも驚いていました。本当に動物の持つ力はすごいと思いますね。
——今後はどのように活動をしていきたいと考えておられますか?
天野 今まで20年以上、ずっと無報酬のボランティアで、和気あいあいの楽しいグループとして活動をしてきました。せっかく長く続いているので、私がいなくなっても、このまま続けてほしいと思っています。そのためには、単なるサークルではなく、NPO法人にしたい。そうして、ずっとアニマルセラピーを続けていってもらいたいと思います。
同サークルが月1度訪れている介護老人保健施設「ホスピア三軒茶屋」の職員は、「わんちゃんが来ると、どの高齢者の方も自然な笑顔になります。天野さんたちがお帰りになった後も、みなさん穏やかに過ごされています」と話す。毎月楽しみにしている入所者も多く、セラピー効果を実感しているそうだ。
(村田泰子)