サイゾーウーマンカルチャーインタビュー風俗で働く沖縄の女性と身近にある暴力 カルチャー 『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』著者・上間陽子さんインタビュー(前編) 「基地が間近にあるのは、それだけで暴力的な体験」風俗業界で働く女性から見える沖縄の現実 2017/03/19 17:00 インタビュー沖縄性暴力 『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版) 「こんなに早く大人にならなくていい」ーー上間陽子さんは、ある女性に心の中でそう呼びかける。彼女はキャバクラで働きながら子どもを育てるシングルマザーで、名前を亜矢という。中学2年生のときに、集団での性暴行に遭っている。しかし彼女の両親はそれを隠し、事件化しなかった。それどころか「お前が悪い」と娘を責めた。店では19歳と言っているが、まだたったの17歳だ。 『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版)は、教育学を専攻する琉球大学教授・上間陽子さんにとって初の著書となる。上間さんは2011年から、沖縄の風俗業界で働く女性たちの調査をしている。彼女らには支援が必要なのに、支援が届きにくい。その現実を打破する突破口を見出すため、女性たちがこれまで生きてきた道のりを聞き取り続けた。同書には、その中で出会った6人についての記録が収録されている。多くが10代の半ば~後半で出産し、夜の街で働いて生活している。 ■現実があまりに過酷なため、むしろ抑え気味に書いている 「調査」というとドライな印象を受けるが、数ページも読めば、女性たちにとっての上間さんは、“何かあったら駆けつけてくれる人”“どうしていいかわからないとき、誰よりもそばにいてくれる人”だということがわかる。 「それでも“友達”ではないんですよね。それぞれの女性によってスタンスは違うんですが、私の役目はあくまで“聞き取る”こと。ただ、調査のさなかにも暴力にさらされたり、事件に巻き込まれたりする子がいるので、『こういうところに相談できるよ』『ここにつなぐからね』とアナウンスしてから行動に移します。だから、彼女たちからすると私は、“いろんなことに詳しくて、なんか親切なクラスの委員長”的な存在みたいですね(笑)」 女性たちは、暴力を振るわれながら成長してきた。親から、きょうだいから、そして恋人、夫から。サンドバッグのように一方的に殴られ蹴られるなんて、現実のことと思えない人もいるかもしれない。 「よく“盛ってる”と言われるんですよね。彼女たち自身がまず大げさに話をして、さらに私がそれを誇張して書いている、と。本当にコレが盛られたものだったら、どんなにいいだろう、と思います。彼女たちの現実があまりに過酷なため、私はむしろ抑え気味に書いているくらいなんです」 上間さんが聞き取った女性たちの言葉は、時おり補足を差し挟むことはあるものの、一言一句そのまま掲載されている。それは同書が「調査」を基にしているからではあるが、話が前後したり言い淀んだり、同じ語を何度も繰り返したりといったところにこそ、女性たちの動揺や混乱が見て取れる。彼女たちは確かに存在し、こんな大変な時期を生き延びて、現在も沖縄で暮らしているという、圧倒的なリアリティがある。 次のページ 基地が間近にあるのは、それだけで暴力的な体験 12次のページ Amazon 裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち (at叢書) 関連記事 風俗店男性スタッフの労働環境とは? 経営者が語る、体育会系でブラックな実態最低賃金が1,300円になれば風俗嬢は激減する 風俗から見る女性の貧困と格差問題これ以上、性犯罪被害者を出さないために 加害者の治療と家族の役割「一度、性暴力に遭った女性は繰り返し遭う」友人や家族が被害者になったら、どうすればいいか相手がセックスに合意していたと思ったから無罪? 強姦罪の立件が難しい理由