第一線へのカムバックをかけて……

あのトーニャ・ハーディングも参戦! 意外な名勝負が多い、セレブのボクシング対決

2017/03/05 21:00

■元女子フィギュアスケート選手トーニャ・ハーディング VS ビル・クリントン セクハラ訴訟のポーラ・ジョーンズ

 伊藤みどりに次ぎ、世界で2番目にトリプルアクセルを成功させた女子フィギュアスケート選手として注目を集めた、トーニャ・ハーディング。94年の全米選手権で優勝したが、この優勝は「元夫に頼んでライバルのナンシー・ケリガンにけがを負わせ、出場できなくさせた」から手にしたもの。疑惑の目を向けられながらも、トーニャは直後に開催されたリレハンメルオリンピックに出場。調子は最悪で、靴ひもの具合が悪いなど散々駄々をこねたものの、結果は8位。オリンピック終了後、罪を認め、有罪判決を受けた。

 この事件でスケート界からも制裁を科されたトーニャは、裁判の借金を返すためにバンド活動をするものの、大ブーイング。元夫とのセックステープを売ったかと思えば、DV罪で逮捕されるなど、相次ぎ問題行動を起こし、完全に干されてしまった。

 トーニャが転落したのは、襲撃事件直前に、マネジャーのマイケル・ローゼンバーグが彼女の元を離れたからだという説がある。そのマネジャーが2002年、久しぶりにトーニャから電話を受けた。「FOXテレビから『Celebrity Boxing』って番組に出場しないかとオファーされたんだけど、報酬が5,000ドル(約56万円)なの。これって少ないよね?」。トーニャはマイケルに、もっと金を引っ張ってきてほしいと頼んだのだ。番組の成功を確信したマイケルは了解し、すぐに局と交渉を開始。報酬額を12万5,000ドル(約1,400万円)まで上げることに成功した。そして、トーニャにトレーニングをつけ、最高のコンディションで試合当日を迎えるように整えた。

 相手は、ポーラ・ジョーンズ。アーカンソー州の元職員だった彼女は、91年に同州の知事だったビル・クリントンに目をつけられ、執拗なセクハラを受けるという被害に遭った。ビルは嫌がっている彼女をホテルの部屋に呼び出し、全裸で関係を迫るというとんでもないこともした。拒否した彼女は直後に配置転換され、その復讐としてビルが大統領になった後の94年にセクハラ裁判を起こし、一躍有名人になった。この裁判がきっかけで、ビルとモニカ・ルインスキーとの「不適切な関係」も暴露されてしまい、クリントン夫婦に大きな痛手を与えたといわれている。ちなみに裁判は、ポーラが和解金を受け取る形で99年に終了。その額は85万ドル(約9,600万円)だったと伝えられている。


 そんな2人のボクシング・マッチは、終始「トーニャが攻め、ポーラが顔をかばいながら逃げ回る」という展開に。トーニャの大きな胸も注目の的となり、彼女がパンチを繰り出すたび、大きな歓声が上がった。試合は最後までトーニャのペースで進められ、ポーラは惨敗した。その後しばらく、トーニャはボクシングを続けるなど格闘技界で活躍した、40歳で子供を出産。平凡な日常を送っていたが、最近、また注目されるようになっている。なんとトーニャの伝記映画『I, Tonya』が製作されることになり、人気女優のマーゴット・ロビーが彼女を演じることが決定したのだ。マーゴットの完璧な役作りは大きなニュースとなっており、映画が楽しみという声も多く上がっている。

 一方のポーラも昨年の大統領選挙戦で、ビル・クリントン元大統領からセクハラされた女性として再び注目を浴びるようになった。ドナルド・トランプは10月に開催されたヒラリー・クリントンとの第2回テレビ討論会直前の会見に「ビル・クリントンにセクハラやレイプされた経験のある女性たち」を連れてきたのだが、その中にポーラもいたのだ。彼女の顔は繰り返し受けてきたと思われる美容整形手術のせいで引きつっており、そのことも話題となった。

■女子プロレスラー チャイナ VS 女の敵 ジョーイ・バタフューコ

 身長178cmという長身にボディビルダーのような筋肉もりもりの体形で、90年代のプロレスを大いに盛り上げたチャイナ。女子レスラーでありながら男性レスラーと対等に戦い、女性初となるWWEインターコンチネンタル王座を獲得。

 そんな彼女が戦ったのは、「最低の男」「最悪な不倫男」「女の敵」として全米からバッシングされたジョーイ・バタフューコ。ジョーイは自動車整備会社を経営しており、当時16歳だったエイミー・フィッシャーという女性客と不倫関係に陥った。エイミーは18歳年上のジョーイに夢中になり、彼の妻に殺意を抱くように。92年、エイミーはとうとうジョーイの妻を銃で撃ち、逃走するという大事件を起こしてしまった。エイミーは殺人未遂で逮捕され、「悪い男にたぶらかされた、かわいそうな娘」と同情を集めた。彼女は7年間刑務所で過ごし、出所後はポルノ女優になった。彼女と不倫関係にあったジョーイも、未成年のエイミーと性的関係を持ったとして、未成年者への強姦罪などで逮捕。奇跡的に回復した妻からも離婚され、「妻がいるのに少女をたぶらかした最低な男」として全米の女性から敵視されるようになった。


 そんな「女の中の女」と「女の敵」が戦ったのは02年5月。『Celebrity Boxing』エピソード2の目玉試合としてセットアップされたのだ。プロレスではチャンピオンにまで上り詰めたチャイナだが、不慣れなボクシングでは苦戦。最初からジョーイにボコボコに殴られるという展開になり、まったく手加減しないジョーイに対して会場から大ブーイングが巻き起こった。やられっぱなしだったチャイナだが、最後まで果敢に挑み、体を持ち上げられ放り投げられた時は、ジョーイを睨みつけ威嚇。しかし、リング上での男女の力の差はとうてい埋められるものではなく、チャイナは惨敗してしまった。

 チャイナだが、その後、日本のプロレス界で活躍した後、モデル、女優を経てポルノ女優へと転身。タブロイドを賑わせる存在となっていった。ポルノ女優になっても人気を集めていたチャイナだが、昨年4月にカリフォルニア州の自宅で遺体となって発見。享年45。薬物とアルコールの過剰摂取が原因の事故死だった。

 一方のジョーイだが、相変わらず自動車整備会社を経営する傍ら、リアリティ番組だけでなく映画などにも出演。法廷リアリティ番組に出演し、料金を支払わない客を訴えて金を回収して話題を集めるなど、お騒がせセレブ的存在となっている。

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