スキャンダルだらけの芸能界

「SMAP解散」「のん独立」「ベッキー不倫」「フジ凋落」芸能ニュースを弁護士が斬る!

2017/01/08 19:00
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いろいろあったけど、目の輝きは濁っていない?

◆「のん(能年玲奈)独立問題」――「待遇悪い」と批判するのは正しいやり方ではない

 のん(能年玲奈)が事務所との確執から、勝手に個人事務所を設立したとの報道が流れ、大騒動に発展。のん側は事務所に不信感を抱き、独立を決めたと「文春」で報じられたが、事務所側は一切独立を認めておらず、今もなお公式サイトには「能年玲奈」のプロフィールが掲載されている。世間では、「事務所がテレビ局に圧力をかけ、のんの番組出演にNGを出している」などとウワサされ、のんへの同情論が強いものの、契約の観点から見ると、のんと事務所、どちらに非があると判断されるのだろうか?

【近衛氏の見解】
 最近のアイドルは、よく「最初のお給料はたったの○万円でした」というような発言をしています。恐らく「労働者」の自覚があるのでしょうが、実のところ芸能人は、少なくとも契約上、「労働者」ではない場合が多いのではないでしょうか。

 芸能人の多くは、芸能プロダクションと「業務委託契約」を結んでいるでしょう。それは、働いた“時間”に対して対価をもらう労働者の「雇用契約」とは違い、“成果物”に対して報酬をもらう契約です。タレントの業務委託契約書の内容はわかりませんが、お金になる仕事、ならない仕事とりまぜて行うので、一つひとつの仕事の成果ごとに加算はあるかもしれませんが、1カ月あたり定額だと思います。だから労働者という感覚なのでしょう。

 これに対して、彼らを管理するマネジャーは事務所の「労働者」で、時間に対して給料が支払われます。業務が長くなれば残業代がかさむことになり、マネジャーの取り分は多くなりますが、タレントの報酬は同じ。タレントとマネジャーは、チームとして働いているのに、こうした違いが出てしまうのは、バランスが難しそうですね。まして、芸能事務所は売れている芸能人の何倍何十倍もの売れていない芸能人とその人に付いているマネジャーを抱えているわけで、全体の食い扶持を一部の売れている人たちが支えざるを得ない構造もあるのです。


 のんさんが、事務所を独立するに当たって、事前に交渉しないまま独立することは考えられません。しかしこうした「話の行き違い」があることを考えると、事務所とのんさんの間で円滑なコミュニケーションが取られていなかったのでしょうね。お互いに信頼関係が成り立っていたら、このような話にはなっていなかったと思います。

 また、のんさんを一躍人気者にした『あまちゃん』(NHK)は、企画としてそもそもヒットが約束されたような作品でした。震災がテーマで、脚本が人気作家。オーディションに合格したのはのんさんご自身の実力だったにせよ、人気女優を擁する事務所という後ろ盾があってこその面もあったかと思います。それを無視して、「待遇が悪かった」「やりたいことをさせてくれなかった」と契約者を一方的に批判するのは、正しいやり方とは思えません。「干されているのかどうか」という以前の問題として、大手事務所を敵に回した人間はその後、制作側としては使いにくいのは仕方ない。実際、所属の契約で揉めているというのならば、制作側は誰とどういう契約を結べばいいかわからないですし。「誰と契約して良いかわかりません」という口実もできてしまう。

 この件は、芸能人の条件闘争という、一般に見せるべきではない裏側を見せてしまったことで、のんさん側にも事務所側にも問題があると思います。法律的な意味ではないですが。日本人は「ごめんなさい」している人を、それ以上無碍にできない風潮がある。双方、そういう風潮をうまく利用するという方策もあったんじゃないかと感じます。仮に、のんさんが一言「お世話になった事務所に対して、こんな形になってごめんなさい」と言っていたら、事務所側が一言「彼女の才能は素晴らしく、会社への貢献には感謝している。引き続き双方にとって良い関係を模索したい」と言っていたら、少なくとも表面上の泥仕合は避けられたのではないでしょうか。本音はファンがいないところで応酬すべきですよね。

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