カルチャー
『記憶をつなぐラブレター 母と私の介護絵日記』著者・城戸真亜子さんインタビュー

「認知症の義母に対して距離を持って見ている」城戸真亜子が語る、無理をしない10年介護

2016/12/02 15:00

『記憶をつなぐラブレター 母と私の介護絵日記』(朝日出版社)

■胃ろうをしてでも生き続けてもらいたい

――お義母様との日々を綴った絵日記には、まさにそうした“老いてこその可愛らしさ”が描かれていますよね。絵日記は、何をきっかけに始められたのでしょうか?

城戸 日記をつけるのは、義母の記憶をつなぐためという理由もあったのですが、ただ文章を書いていても、なかなか目に留まらないんです。そこで、ちょっとイラストを描いてみたところ、興味を持って見てくれて、「これ、私の似顔絵?」などと気づいてくれるのがうれしくて、継続して描くようになりました。

 絵日記を描いていると、義母の仕草が、ありありと思い浮かんでくるんですよね。描くという行為で、その日に起きた出来事を反芻すると、愛情がさらに深まるんです。その人をじっと観察して、いろいろな角度から向き合う、つくづく“絵を描くことは、人を愛することに似ている”と思います。

――とはいえ、10年以上、毎日絵日記を続けるというのは、すごいことですよね。

城戸 そんなに頑張ってはいないんです。自分が、ただ好きで描いているだけなので。お天気とか食べたものを記しておくだけでいいわけで、そんなに時間もかかりません。とにもかくにも、介護は無理をしないことが大事ですね。無理をすると、どうしても言葉がきつくなったりします。いま振り返ってみると、母のためでもあったけど、自分のために絵日記を続けていたんだなとも思います。

――5年前に骨折されたことをきっかけに、お義母様の体が不自由になられたこともあって、特別養護老人ホームへの入居を決断されたとか。これから先、悔いが残らないようにするために、どのようなサポートをしていきたいとお考えでしょうか?

城戸 今はもう完全に寝たきりの状態で、言葉も出なくて、食べ物も喉を通るのが難しくなってきています。それでも、「カニですよ」とか「リンゴですよ」と話しかけながら好きなものを見せると、リアクションをしてくれるし、本人の生きる意志が伝わるんです。

 声が出なくても“目に笑みが宿る”、そういうのは感じるんですよね。なので、私も精いっぱい“生きてほしい”という想いを込めてマッサージをしてあげるとか、一方的ですが、会話をしたり、写真を見せてあげたりしています。私たちは夫婦ともに仕事もしているし、施設の方のサポートなくしては介護もできないのですが、私としては体力が持つようであれば、胃ろうをしてでも生き続けてもらいたい。ただ、それは、これから向き合っていかなければならない問題かなと思っています。

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