【独身でも孤立しない暮らし方を考える】第1回

独身でも孤立しない暮らし方 住人同士が協力して暮らす「コレクティブハウス」の魅力とは?

2016/11/15 15:00
コレクティブハウジング社理事・矢田浩明さん
コレクティブハウジング社理事・矢田浩明さん

 「おひとりさま」という言葉が流行語になってから10年あまり。いまや、ひとり旅、ひとり焼肉、ひとりカラオケ……などなど、ひとりでも楽しめるレジャーが充実し、ひとり行動をポジティブに捉える「ソロ活」という言葉も生まれ、ひとりが必ずしもさびしいことではなくなってきた。一方で、未婚化・晩婚化は進み、孤独死が問題になっている現代社会。女性が独身で生きていく上で、孤立しない暮らし方を考えてみたい。

 中でも最近注目されているシェアハウスやコレクティブハウス(私生活の領域とは別に共用空間を設け、食事・育児などを共にすることを可能にした集合住宅)は、新しいライフスタイルというよりは、むしろ昔ながらの町内会やご近所との関係に近いが、プライバシーも適度に保たれることで、より快適な住まい方といえるのかもしれない。今回はコレクティブハウスの現状を追ってみた。

■干渉も孤立もない「居場所」

 コレクティブハウス運営のコーディネートなどを行う団体である特定非営利活動法人コレクティブハウジング社(東京都豊島区、2000年設立)では、現在、国内4カ所でコレクティブハウスの運営を支援している。

 そのうちの1つである多摩市の「コレクティブハウス聖蹟」は、新宿駅から特急で約30分の京王線・聖蹟桜ヶ丘駅より徒歩5分ほどの場所に位置するモダンな2階建ての建物である。現在、1~80歳代の25人(大人18人と子ども7人)が入居し、独り暮らしから子どものいる家庭まで、属性も職業も幅広い。


「コレクティブハウスでは、準備の段階から居住希望者がプロジェクトに関わりますが、ここでは、竣工(09年4月)より前の07年6月に居住希望者の募集を開始しました。私たち夫婦もその段階から参加し、のちに居住を決めたのです。大家さんに地域を案内してもらったり、設計者と話し合いながら、建物から内装まで決めていくプロセスに参加してきました」

 現在も家族で居住しながら、NPOの理事も務める矢田浩明さんは、こう説明する。矢田さんがコレクティブハウスに興味を持ったのは、子育てがきっかけ。

 「子育ての環境を考えた時に、隣の人の顔も知らないようなマンションよりも、人と人が関わり合うような環境があるほうがいいと思ったのです。とはいえ、実は最初は『人と関わって住む』ということに抵抗はありました。妻は、あまり抵抗がないようでしたが」と振り返る。

「でも、建物の間取りを話し合っている時に『みんなのいるリビングの前を通らず、直接自分の部屋に行けることは大事』という意見が多くの人から出て、これなら大丈夫かなと思いました。プライバシーに配慮した関係を望んでいるとわかったからです」(矢田さん)

 誰にも会いたくない時には自室へ直行できる一方で、コモンスペースでみんなで食事をしたり、残業の時などは子どもを見てもらったりすることもできる。孤立も、干渉したりされたりということもない、ほどよい距離感。コレクティブハウスの魅力は、そこにあるようだ。


第3の住まい-コレクティブハウジングのすべて- (住総研住まい読本)