【連載】彼女が婚外恋愛に走った理由

「夫の浮気と姑の嫌味」を我慢するために――保守的な主婦が、婚外恋愛に溺れた理由

2016/09/24 19:00

「私自身が後ろめたいことをしていれば、夫の浮気や姑の嫌味にも我慢できるんじゃないかな、と思ったんです。お外で浮気をすれば、何をされても文句を言えなくなりますから」

 夏津さんが婚外恋愛の相手に選ぶ男性には、ある条件があった。

「結婚をしている男性は婚外恋愛として平等なんだけど、その分、我慢しなければならないことが多くなるので……私は家庭内でたくさん我慢しているから、相手の家庭のことまで考えて我慢するのは嫌だったんです。だから、年下の独身男性との恋愛が多かったですね」

■彼の奥さんに「負けたと思った」

 しかし独身男性との婚外恋愛は長続きしない。相手に恋人ができたり、既婚者である夏津さんとの恋を「不毛だ」と感じ、自然消滅してしまう男性も多くいたという。そんな夏津さんが唯一8年間交際したのは、学生時代の知人である既婚者だった。


「彼とは同窓会サイトで再会しました。当時あこがれていた先輩です」

 お互いに既婚者、そして子持ち。夏津さんの婚外恋愛相手のセオリーとは外れるが、彼は時間も金もたっぷり使って夏津さんを愛してくれたという。

「私、重いんですよ。相手の家庭についてもギャアギャア物申しますから。でも彼はそれを懲りずに付き合ってくれた。ずっとこっちを向いてくれたから長く続いたんでしょうね」

 ドライブで遠出をして、おしゃれなフレンチレストランで食事をし、ホテルで抱き合う――そんな日々を8年間過ごしてきた夏津さんカップルの関係に暗雲が立ち込めたのは、彼の妻に対面した時であった。

 交際当時、彼は「子どものため」と、デートを早く切り上げたりしたことがあったという。


「しょっちゅう趣味を理由に家を留守にしたり、海外旅行に行ったりと、とても奔放な奥様だと聞いていました。同窓会サイトがきっかけで彼と再会した日、彼、すごく奥様の自慢話をしていたんですよね。美人で、仕事ができて……って。もちろんその日は、それから男女の関係になるとは夢にも思いませんでしたから、彼も本音で話したんでしょうけど。今思い返すと合点がいきますね。彼が率先してお子さんの世話をすることは、奥さんへの愛情なんですよ」

 彼が無意識のうちに話していた妻の話は、ずっと夏津さんの心にしこりのように残っていた。そして夏津さんは、ひょんな偶然の積み重ねで、彼の妻に対面することになる。

「『美人な人がいるな』と思って、店員の方の名札を見たら、彼と同じ名字だったんです。彼からは、奥様がその店で働いていることを聞かされていましたから……負けたなと思いました。手が震えましたね。ああ、この人か……って。写真でしか見たことがなかった彼の奥様の声や仕草を目の当たりにして、ショックを受けてしまい、彼とも自然と距離を置くようになりました」

 以来、しばらくは彼とは体の関係を持たず、“男友達”の1人として接していたが、現在はほとんど連絡を取っていないそうだ。

 その後、浮気性の夫とは離婚をし、現在は独身生活を謳歌している夏津さん。今後の展望を聞くと、明るい微笑みを浮かべて話してくれた。

「子育てもひと段落しましたし、小さいけれどマンションも購入しました。仕事も充実しています……でも、できるならもう一度結婚してみたいかな」

 さわやかな笑顔を浮かべてそう話をする夏津さんの表情には、「負けた」と認められるまで恋愛を全力でやり尽くした女性の強さが垣間見えた。
(いしいのりえ)

最終更新:2016/09/24 19:00
『妻と恋人 - おぼれる男たちの物語』
奥さんの方も気づいていたら胸熱