年下男に1470億円貢ぎ、政界大揺れ! 男に溺れたロレアル創業者一族の“人類史上最も裕福な女”
◎男とのスキャンダルが政界まで飛び火
そして晩年、彼女は醜聞にまみれる。
夫が亡くなった2007年に、まず不倫愛が発覚。お相手は25歳も年下の高名なカリスマ写真家、フランソワ=マリー・バニエだった。
そして、はるか年下の愛人との恋に溺れ、貢ぎまくっていた事実も明るみに出た。現金だけではない。生命保険の受取人の権利、ピカソやモンドリアン、マティスなどの絵画、さらにインド洋のリゾート地セイシェルの島……その総額は、およそ13億ユーロ(約1470億円)に上るという。
激怒したのは、本来これらを相続するはずだった一人娘のフランソワーズだ。
「母はボケているのよ! バニエは、そこにつけ込んだサギ師よ!」
法廷に訴え出た娘に、反論したのは当の母親だった。
「ボケてなんかないわよ! 私は自由な1人の女。あの人は20年来の大切なカレシ。あんたに口出しされる覚えはないわ!」
亡き父が見たらきっと嘆くであろう、金と男をめぐる母娘の対立に、フランスのゴシップ界は沸いた。しかしコトは、政界にまで飛び火する。娘フランソワーズは法廷に、実家を盗聴したテープを提出したのだ。その中には、バニエが認知症の母リリアンヌを言いくるめたり、だまして証書などにサインさせているところだとされる音源が収められていた。
不適切なカネの流れを洗うために警察が動きだしたのだが、この捜査の過程で、ロレアル創業者一族のスイスやセーシェルでの隠し資産が発見される。
さらに資産の一部は、違法な政治献金として、サルコジ前大統領の陣営に渡っていたという疑惑が持ち上がったのだ。警察は政界トップを違法献金受け取りの疑いで捜査、こちらも裁判沙汰に発展する。
結局は不起訴で終わったのだが、それでもサルコジ氏のイメージは悪化。12年の大統領選で敗れ、再選を果たせなかった原因だといわれている。
母娘の裁判はいったん和解したものの、再燃。15年、裁判所は、娘フランソワーズの訴えを認めた。バニエを財産乗っ取り犯とし、懲役3年、ベタンクール家への損害賠償1.58億ユーロ(約180億円)の支払いを命じる判決を下したのだ。同時に事件に関与し、共謀したとして、ほか計8人も、やはり有罪となった。
名家に渦巻く肉親の愛憎劇、不倫のドロドロ、カネ、政治……昼ドラだって土ワイだってここまで濃くはないという諍いを、これでもかと見せつけ、フランスの庶民を楽しませてくれたロレアル創業者一族。16年にはバニエ側が控訴し、今年は「彼のターンだ」といわれている。人生の最後の最後に醜い争いが待っているとは、大富豪の人生もわからないものだ。