「北欧サマーパーティーinアイスランド大使館」レポート

北欧イベントでわかった、現代の日本女性が“北欧”に惹かれ続ける理由

2016/06/25 19:00
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『好きにならずにいられない』(c)Rasmus Videbæk

 インテリアや雑貨を中心に、日本ではここ数年「北欧ブーム」が続いている。北欧カルチャーのメインでもある安くて可愛いイケアの家具や、ビビットカラーで大きな花柄が代表的なマリメッコのアイテムなどは、確かに女性の胸をときめかせるものばかり。一方で、カルチャー面だけでなく恋愛面においても北欧と日本の相性は良いといわれ、北欧男性との恋を夢見る女性も少なくない。そこまで日本の女性を虜にし続ける北欧の魅力とは何なのだろうか?

 2015年北欧映画No.1を決定する映画賞「第12回ノルディック映画賞」に輝いた、アイスランドの大ヒット映画『好きにならずにいられない』が6月18日(土)より全国順次公開されている。デブでオタクの43歳独身男が、心に傷を負った女性と出会い、自分の人生を変える運命的な恋をしていくという心温まるラブストーリーだ。

■北欧映画の魅力は、寒い地域ならではのブラックさとリアリズム

 同映画の公開を記念して先日、アイスランド大使館にてイベント「北欧サマーパーティーinアイスランド大使館」が行われた。会場には幅広い年齢層の北欧好き女性約40名がつめかけ、登壇ゲストが語る北欧映画や恋愛事情など、さまざまな北欧の魅力に耳を傾けていた。

 イベントの第1部は、東京国際映画祭プログラミングディレクターの矢田部吉彦氏、北欧の新作や話題作を上映する映画祭であるトーキョーノーザンライツフェスティバル運営スタッフの細川氏をゲストに、北欧映画の現在に関するトークが繰り広げられた。


 北欧映画は、冒頭で挙げた可愛らしいインテリアや雑貨のイメージとは対照的で、寒い地域特有の景色や壮大な自然をバックに、社会問題を描いたものや心に深く切り込む作品が多い。矢田部氏は北欧映画の魅力について、「各国共通でとにかく重たい。人の心の中に土足で入ってくるようなリアリズムがある」と述べる。細川氏もこの意見には、「あまりにも入ってこられすぎて、つらくなる時も」と同調した。

 その北欧映画の特徴を色濃く持つ監督の1人として両氏が注目しているのが、スウェーデンのリューベン・オストルンド監督だと言う。カンヌ国際映画祭で絶賛された彼の監督作品『フレンチアルプスで起きたこと』(2014年)は、家族旅行で訪れたスキー場で雪崩が起き、夫が妻と子どもたちを置いて1人で逃げるというストーリー。細川氏は、「その後に家族関係がドロドロになるんだけど、ブラックな笑いが生まれるか引いちゃうか、男女で意見が分かれそう」と述べた。

 最後に本作『好きにならずにいられない』の話に及ぶと、矢田部氏は「ダメ男を見せるのが得意な監督が、寒い地域と対比するように温かい人物を描いている。北欧映画特有の重たさがある訳ではないものの、主人公のキャラクターと彼の生き様には強い共感を覚える」と男性ならではの見解を示して第1部は終了した。

『北欧のアイデンティティ (北欧社会の基層と構造)』