“所持金60円のホームレス状態”から“東大の学生”まで 日本で暮らす難民の現状
◼「難民」という遠い存在を、顔が見える存在に近づけていきたい
パキスタンから逃げてきた兄弟
――難民のことを知らない方に見てもらえるよう、街中での写真展にしたそうですね。どんな想いを込めましたか?
田中 「難民」は遠い存在として、ひとくくりにされがちです。私たちは顔が見える「個人」として、彼らのことを届けたい。難民にも、いろいろな方がいらっしゃいます。日本での滞在期間の長さや、就労準備プログラムなどを活用して自立に向けて動いたかによって境遇は異なりますね。展示する写真には、日本での生活の不安が垣間見える方、東京大学の学生、家族と一緒の父親、商社に勤める会社員などさまざまな姿が現れています。一見、安定して見える方も生活には苦労されているんです。1人ひとりの顔を見て「どんな人なのか」「なぜ日本に来たのか」と想像してもらうことで、難民のことを考える契機になれば良いと思いますね。
――逆に、難民の方は日本にどんな印象を持たれていますか?
野津 生活は大変だけれど安全だし、来日したおかげで命拾いできたと感謝している方が多いです。
田中 一方で、日本社会で暮らす人々には「難民」に悪いイメージがあるからと、今回の写真展出演を断った方もいました。知り合いに「自分は難民だ」と伝えて、嫌な顔をされた経験があるんですよ。日本では「難民」を、“弱々しくて何もできない人”と誤解しがち。実際は、生き延びるために日本まで逃げてくる行動力やバイタリティがある人たちが少なくありません。
空腹で事務所にたどり着く方のために、すぐ食べられる食品をストック
保管場所がないホームレスの方の荷物は、事務所で預かる
――私たち一般市民が、できることは何でしょうか?
野津 まず、難民について知ることが第一歩。いざ難民から助けを求められた時に、けげんな顔をして去るのか、手を差し伸べるのか、知っていれば行動が変わるのではないでしょうか。
写真家の宮本氏は「自分を良くみせようとすることなく、皆さん堂々とされていました」と語った
――今後、行いたい支援とは?
田中 難民が日本社会に受け入れられるよう、地域に向けて取り組みたいです。難民に限らず“自分たちと違う人”が住みやすい社会になることは、多様な人がより良く生きられることにつながっていくと思いますね。
(田久保あやか)
認定NPO法人難民支援協会
1999年の設立以来17年間、日本に逃れてきた難民への支援を実施。国連機関UNHCRのパートナーでもある。難民申請の手続きから衣食住、教育、就労などの支援を行いつつ、難民受け入れに関する政策提言や啓発活動にも力を入れている。
フォトグラファー宮本直孝×難民支援協会 共同企画
「Portraits of Refugees in Japan‐難民はここにいます。」
6月20日(月)~26日(日)、東京メトロ表参道駅のコンコース(ADウォール・B1出口付近)にて開催。