サイゾーウーマンカルチャーインタビュー世界一清潔な空港を支える女性の生き方 カルチャー 『清掃はやさしさ』著者・新津春子さんインタビュー 「清掃という仕事の“やさしさ”に報いたい」世界一清潔な空港を支える女性の生き方 2016/06/09 15:00 インタビュー ■清掃という仕事は常に新しいことがあるので終わりがない ――清掃という仕事で認めてもらう上で、どのようなことを意識されていましたか? 新津 清掃を極めようとすると、いろいろなことを考えなくてはいけません。基本的なことは人に教えてもらうことができますが、その後は全部自分で考えてやらなければいけません。清掃は形には残りませんが、達成感は自分でわかるので「もっと頑張ろう」「もっときれいにしよう」と思える仕事です。清掃してもすぐ汚れるので、常にきれいに維持することができれば人からも評価してもらえます。 ――誤解を恐れずに言いますと、清掃という仕事はどちらかというと人があまりやりたがらないものだと思うのですが、これまで「しんどいな」とか「辞めたいな」と思われることはなかったのでしょうか? 新津 なかったですね。私にはこれしかないので、一生懸命仕事を覚えてどんどん前に進んでいくことしか考えていませんでした。体力も十分あったということで、つらさを感じたことはありませんでした。自分自身が楽しんでやっているというのもありますよね。「清掃」という仕事は常に新しいことがあるので、終わりがないのです。だから今までずっと続いているのだと思いますし、きっと楽しいんだと思いますね。 ――新津さんは結婚されていらっしゃいますが、家庭と仕事の両立や子どもを産むかどうかなど悩まれましたか? 新津 悩みました。とくに子どもについては、今の仕事を自分なりに満足できるようにこなすには出産すること自体難しいと思っていました。高い脚立に乗ることもあるし、おなかが大きくなったら、もちろん仕事は続けられません。子どもが病気になった時も緊急の連絡を受けられなくなってしまいます。いずれにしても一緒に働く人に、とても迷惑をかけてしまうので、私の性格では両立させるのは難しいと判断して、子どもは作らないと決めました。夫にも理解してもらっています。 ■社内に1人だけしかいない「環境マイスター」 ――社内の清掃員500人のうち、新津さんは唯一「環境マイスター」という肩書を持っていらっしゃいます。環境マイスターとは、具体的にどのような役割になるのでしょうか? 新津 私が所属している日本空港テクノでは、羽田空港の環境衛生管理を一手に担っているのですが、第一に技術が優れていること、そして全国ビルクリーニング技能競技会で優勝すること、さらにお客様対応の良さを会社が認めた上で授与される社内独自の役職のようなものです。仕事の内容としては、清掃員に対して知識の伝授や技術的な指導をすることや、技術をどれくらいマスターしたかをテストすることなどになります。 ――今は実務から離れて指導する立場でいらっしゃいますが、仕事に対する意識の変化はありますか? 新津 現場で体を動かして働くことが私には合っているので、実務から遠ざかるのは自分が自分でなくなるような気がするのですが、指導することにはやりがいを感じています。あと、洗剤や道具を研究して、いかに時間を使わずにきれいに清掃できるか、いろいろ研究して改善していくこともできるので楽しいです。 ――指導にあたっては、どのようなことに気をつけていらっしゃいますか? 新津 まずは相手の話をしっかり聞くようにしています。褒める部分は褒めて、注意する時は注意します。たとえば、何回教えても忘れて同じ間違いをする時は「ちゃんとメモしてください」と伝えます。会社の基準を守ってもらわないとレベルが保てません。もし会社のレベルが下がれば仕事をいただけないですから。空港の清掃は1人ではできませんが、同時に全作業員が同じレベルでやるべき仕事です。それに協力してもらわなくては会社として成り立たなくなってしまいます。 会社が良い仕事をすることで認められ、仕事を依頼される、それで社員がお給料をいただけるのですから、皆が責任をもって働かなくてはいけません。そして、この「清掃」という仕事に誇りを持ってほしいのです。 前のページ123次のページ Amazon 清掃はやさしさ: 世界一清潔な空港を支える職人の生き様 関連記事 「男に媚びを売ってポジションをつくる女が増えている」ピンク映画界の巨匠が語る、現代女性の生き方いまは“多様な女性の生き方”の過渡期、現状を悲観せず生きやすい道を選ぼう「芸能人宅の家政婦ってどんな仕事? お給料は?」楽しんごのお手伝いさんに聞いた!小林悠、吉田明世、佐藤渚……TBS女子アナ“連続スキャンダル”で問われるプロ意識 「BAILA」が井森美幸召喚!! 例のダンスを“誇り”と語る彼女に、アラサーが学ぶべきこと