サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー「婦人公論」はなぜ読者に「語らせる」のか カルチャー [女性誌速攻レビュー]「婦人公論」3月8日号 不満を共有し読者に“自分語り”の快楽を与える、「婦人公論」の奇跡のシステム 2016/03/03 18:00 女性誌速攻レビュー婦人公論 「婦人公論」3月8日号(中央公論新社) 創刊100周年記念の祝賀モードから、ようやく通常運転に戻ってきた「婦人公論」(中央公論新社)。特集の前にまずはこの方、しつこいですが「婦人公論」三種の神器の1人に数えられる、氷川きよしのインタビューからレビューを始めたいと思います。題して「デビュー17年目の新境地 一途に思う女性の気持ちを僕も歌えるようになったかな」。4ページの中にきよしイズムがあふれ過ぎていて、思わず手が震えます! 全編にわたる氷川の“させていただく節”は言わずもがな、今回もご婦人を絶頂に導くお言葉でいっぱい。「もともと演歌歌手になろうと決意したのは、演歌を歌って年配の方に喜んでいただきたかったから」「上京して間もない頃も、近所の親切なおばあさんにお味噌汁やご飯をご馳走してもらいました」「以前いただいた花束にアジサイが入っていたので、挿し木をしたら大きく育ってくれて」「おじいちゃんが植木職人でしたので、形見の剪定鋏を使って、パチパチやっています」など。歌手になるきっかけ、下積みエピソード、プライベート話に至るまで、高齢女性がグッとくるキーワードを散りばめる完璧なインタビュー……まさに「氷川きよし」という高齢者福祉。過去に元マネジャーが彼の横暴さを告発したことがありますが、裏でファンをババア呼ばわりしようが、スタッフを足蹴にしようが、そんなことはどうでもいいのです。「氷川きよし」というイリュージョンを17年続けてきたきよしクンの胆力には敬服せざるを得ませんよ。 <トピックス> ◎氷川きよし デビュー17年目の新境地 一途に思う女性の気持ちを僕も歌えるようになったかな ◎特集 どこで差がつく? 機嫌のいい人、不機嫌な人 ◎読者ノンフィクション “運命”という落とし穴 ■「婦人公論」のいうポジティブは超危険 さて、今号の特集は「どこで差がつく? 機嫌のいい人、不機嫌な人」。リードには「日々の暮らしには心波立つこともあるけれど、できれば穏やかに過ごしたい。機嫌のいい時間が積み重なれば、人生の充実度は大きく違ってくるはずです」とあります。毎度毎度、夫、舅姑、息子の嫁、友だち、ご近所の悪口言いまくりなのに、「できれば穏やかに過ごしたい」とのたまう「婦人公論」。なんてわがままジュリエット。 しかしこの「機嫌のいい人」特集は、「婦人公論」では定期的に登場する鉄板ネタ。その理由はこんな企画が物語っています。「ポジティブな人は健康で長生きできる」。そうです。ピンピンコロリこそ、「婦人公論」読者の生きる道。なんでも毎日ご機嫌に生きている人ほど長生きするというのは、科学的に証明されているのだとか。「アメリカの修道院で暮らす尼僧を対象にした研究」は、同じ環境で同じものを食べている彼女たちの手記を分析し、「ポジティブグループ」と「ネガティブグループ」に分けて「全員が80歳以上になったときの健康・生存状態」を調査。結果、「ポジティブグループのほうが、なんと平均約9年も長生きだった」そうなのです。 ちなみにどうやってグループを分けたかというと、手記の中で「楽しい」「嬉しい」「幸せ」といった言葉をたくさん使っているか、それとも「寂しい」「つらい」「困った」が頻発しているか。これ、ポジ/ネガの問題というより、自己催眠にかけるのがうまいかどうかではないのでしょうか……。 123次のページ Amazon 婦人公論 2016年 3/8 号 [雑誌] 関連記事 誰もが自分語りしたくなる……「婦人公論」100年の秘訣は女たちに与えてきた“ヒロイン感”なぜ女は自分の墓と葬式にこだわるのか――「婦人公論」から浮かび上がってきた切なすぎる理由怪談より怖い生身の人間……今号も人間の業と家族の呪縛があふれる「婦人公論」現役か、降りるか……「婦人公論」世代が直面する、自身の中の「女」との向き合い方「婦人公論」矢口真里のお詫びよりも深刻な、シングル・ファザーの差し迫った現状