コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

神田うの、“ブランド品窃盗被害”の告白から垣間見えた“セレブの孤独”

2015/12/17 21:00

 親しくなったきっかけを、うのは「私にもよくしてくれました」と述べた。シッターは、うのの洋服のボタン付けをしてくれるなど、子どもだけでなく、うのにも気配りをしてくれたという。信頼していた人に希少価値の高いカネメの物を盗まれた悔しさからか、その表情は終始険しかった。

 新セレブ妻タレントの大沢は、「自分はお掃除の人に入ってもらう場合は、管理人さんに立ち会ってもらっている」とうのの脇の甘さを指摘したが、管理人の目の届かない場所で何かある可能性もゼロではないので、万全な策とは言えないだろう。家に他人を入れることはハイリスクであるらしく、同番組では元タカラジェンヌの毬谷友子も、ペットシッターの女性に、宝石や着物を質屋にいれられるという被害に遭ったと明かした。

 被害に遭ったうのと毬谷には、共通点がある。それは、シッターの女性を「家族(母親)同然」と思っていたことだ。それくらい親しいという意味だろうが、「家族同然」と「家族」は違う。血のつながりを持たない他人と家族同然に付き合うことは珍しくないが、それは両者の関係が対等な場合である。シッターの場合、カネをもらっているわけだから、シッターの方が立場は弱い。シッターが通常の業務の範囲を超えて、うの(や毬谷)に良くするのは、個人的な好意ではなく、雇用主によく思われて、雇用を継続させるためなのではないだろうか。

 そう考えた場合、うのの「よくしてあげた」が、シッターにとってうれしいことだったかは疑問である。例えば、うのはシッターと酒を飲むことを親しさの象徴だと思っているようだが、状況から考えて、酒代はうのの驕りだろうものの、そこで夫婦の愚痴を聞かされることに、賃金は発生しないはず。家族や友人に愚痴を言いやすいのは、話を聞いてもらうかわりに、自分も聞くという「お互い様」な関係だからだが、うのがシッターの愚痴を聞くとは考えにくい。つまり、うのの言う「家族同然」とは、シッター側のメンタル(愚痴を聞かされた相手がどう思うか)に配慮せず、金銭的なメリットも与えないという、家族というより「うのにだけ都合のいい関係」なのである。

 断っておくが、うのが配慮に欠けたから、こんな被害に遭ったというつもりはない。ただ、夫も本人もあれだけ稼ぎ、華やかな交友を誇り、実母も健在なうのが、仕事を終えた後に、愚痴を聞いてくれる相手がシッターしかおらず、その人を信じて頼りにしていたという姿に「孤独」を感じるのである。一般人の想像が及ばないセレブライフを送るうのが、一般人ですら味わうことのないであろう「孤独」を持っている。世の中には、カネで買えないものも確かに存在するということだ。

 窃盗犯が、最初から窃盗目的で、うのの家に入り込んだかどうかは不明である。しかし、うのの抱える「孤独」が、犯罪をほう助した可能性はないとは言い切れないと思うのだ。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。最新刊は『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2015/12/17 21:00
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