サイゾーウーマンカルチャーインタビュー「女」を記号化しない官能小説 カルチャー 『黒闇』刊行記念インタビュー 「女」を記号化しない――官能小説家・草凪優の“匂い立つ”セックスシーンに込められた矜持 2015/09/20 21:00 インタビュー ――迫田は、女の人がきっかけで人生が動いていくなと感じました。美奈子と出会って希望を見いだし、でも杏奈とも関係を持ってしまい、窮地に追いやられます。 草凪 僕がそういう人間ですからね。僕、バツ3なんですよ。女性に振り回されるなと感じてはいるけど、振り回されるのが好きな自分もいるんです。そもそも僕は、自分を好きな人を好きにならなかったんです。自分が自分を好きじゃないから。僕が好きになった人を追いかけたい。乗りこなせない馬の方が乗りこなしたくなる……だから失敗する(笑)。 ――女性には、勝てないと感じるということでしょうか? 草凪 女性に敵わないなと感じるのは、捨て身で来るところ。僕は、全てを放り出しては行けないから、たいてい女性に捨て身で来られると負けます。逆に僕が全てを失ってしまうと、女性に何かをしてあげられる余力がなくなって、女性も失ってしまいますから。女性は、男の臆病さの一枚上を行っていますよね。 ――迫田も女性によって転がされるのが“気持ちいい”という感じがしました。 草凪 そういうのって結構オジサンにありがちな感性で。40代くらいのオジサンは、若い女の子と付き合えば、救いようのない人生が救われるよね、と思ってしまう。でもそれは、女性から見ればとても気持ち悪いと思うんですけど(笑)。うだつのあがらないサラリーマンでも、若い子とたまたまうまくいったら救いになると考えることって、あるんです。男ってそういう考え方を持ってる人は多いのかなと。現実はダメだと思ってますけどね(笑)。 ――迫田は、美奈子と一度セックスをしただけで結婚を決めますが、女性としては、それだけで相手の男性と結婚を決めるという発想はあまりないかもしれません。それは男性のロマンチシズムなんでしょうか? 草凪 俺が食わせてやる、と感じるのが男のロマンチシズムだと思います。永遠に一緒にいたい、ではなくて、「俺がなんとかする、俺が担いでいく、君は神輿になる」っていう。担ぎたいんですよ、男は。力になりたい。そういうときに発揮する力ってあるんです。自分の人生が詰まってしまうと、自分だけの力では無理なんですよ。人のためだったら意外と力が出る。30代後半から40代の頃は、僕自身にもそういう気持ちがあった。人のためだとできることがある……現実にはできないんですけどね(笑)。できるんじゃないか、と感じることはあります。 ――迫田はもともとバンドマン崩れで、果穂に食べさせてもらっていた立場だからこそ、余計にそう感じたのかもしれません。 草凪 自分がなんとかしたい。それは偽善なんだろうけど……そうとも限らないんじゃないかな。支えたい、柱になりたい、そういう願望ってあると思いますよ。若い頃は自分のために生きようと思うじゃないですか。でも若くなくなってくると限界を感じる。自分に才能がないと気づいてしまうと、力を出すには人のためになるしかない。サラリーマンでも「ローンを背負って一人前」というところがある。男社会ってそういうものだから。でも高校を卒業してもバンドなんかやってる男は、そういうことをバカにして生きている。「アホか、自分のために生きるんだ」と。でも自分に限界を感じたときに「ローンを背負ってる人間には敵わないな」と感じるんです。人間って、遊んで暮らしたいっていう願望もあるんですけど、その半面、真面目に働いて暮らしたいという願望もあると思うんですよ。それをうまく利用したのがブラック企業の経営者でしょう(笑)。 前のページ123次のページ Amazon 『黒闇』 関連記事 昭和19年生まれ・古希の熟女AV女優に聞いた、高齢者の性欲と性風俗の現場「男はバカ」と悟った初体験、不倫同棲、父との確執――官能小説家が明かす「セックスを書く私」「一生セックスなしでも3日泣くだけ」官能を描く作家・南綾子、その意外なコンプレックスCA、モデル、クラブママ――女社会のドロドロを見続けた官能作家が語る“女同士”の性「駆け落ち」「熟女パブ」「別居婚」……波瀾万丈の女流官能作家が語るSMの扉を開いた男