井上肇先生インタビュー

「一晩で頭が真っ白に」「抜いたら増える」!? 毛髪医療の権威が、白髪の都市伝説をジャッジ

2015/09/06 19:00
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Photo by Winter_1983 from flickr

 ヘアスタイルひとつで顔の印象が大きく変わるように、髪はおしゃれの必須アイテム。ところが女性にとって悩ましいのは、髪の間から“ぴよっ”と覗く白いアイツ。そう、白髪です。「もう若くない」と現実を突きつけられたかのような絶望感を味わうのと同時に、見た目の印象も老けてしまう白髪の悩みを、若くして秘かに抱える女性も少なくありません。

 「抜いたら増える」「ストレスから一晩で真っ白になる」など、まことしやかに囁かれるうわさも多い白髪の実態や最新の研究事情、正しいケアについて、毛髪医療・再生医療の研究に携わる聖マリアンナ医科大学の特任教授である井上肇先生にお話を伺いました。

――最近は、若いうちから白髪に悩む女性も増えています。白髪になる原因について教えてください。

井上肇先生(以下、井上) 髪の毛が作られるとき、「メラノサイト」という細胞から、細胞内で作られる「メラニン」が供給されることで色がつきます。このメラニンがなんらかの理由で供給されないまま生えてくる髪が、いわゆる“白髪”です。供給されない原因は大きく分けて2つあり、ひとつはエイジング(加齢)に伴ってメラノサイトが消失してしまうため。もうひとつは、ストレスや病気などで一時的にメラノサイトが活動を休止したり、メラニンの受け渡しがうまくできなくなったりしてしまうためで、これを“インマチュアグレイヘア(成熟してない白髪)”といいます。「若白髪」と呼ばれるもののほとんどは、これになります。

――単刀直入に伺いますが、白髪は治すことができるのでしょうか?


井上 エイジングの白髪の場合はメラニンを作る機能自体がなくなってしまうため、その毛穴からは二度と黒髪が生えてくることはありません。そのため、今の医学レベルでは、治すことは難しいと考えられます。しかし、インマチュアグレイヘアの場合はメラニンを作る機能自体は生きているため、メラノサイトの活動が再開したり、メラニンの受け渡しがうまくできるようになったりすれば黒髪に戻ることがあります。

――メラノサイトが休止する、もしくはメラニンの受け渡しがうまくいかなくなる原因は何でしょうか?

井上 考えられる原因はいくつかありますが、一番多いのは、やはりストレスです。次に、糖尿病や膠原病など、体内の酸化ストレスを高めるような成分が大量に生産される病気を患ったとき。あとは、薬の副作用でもメラニンの供給に支障を来たすことがあります。白髪のなりやすさに男女差はあまりないのですが、女性の場合は、女性ホルモンの変動の激しさや、ダイエットなどによって自分自身を過酷な環境に追い込むことも原因の1つになりえます。

――「ストレスで、一晩で髪が真っ白になる」などといったうわさもありますが、あれらは本当ですか?

井上 すでに生えている黒髪にはメラニンが含まれているので、それがストレスで脱失するということはありません。「白髪を抜いたら増える」というのも、気にすることで今まで目につかなかった白髪に気づくというだけで、全て都市伝説です。ただ、“抜く”という行為は自毛を減らすだけなので、あまりお勧めできません。その毛穴から生えてくるのは、結局白髪ですしね。白髪を見つけたら、正しい方法でカラーリングするのが一番です。カラーリングによって、さらに白髪になりやすくなることもありませんしね。


『人生はドンマイドンマイ』