【男と結婚】――男が結婚したい理由(全4回)

イクメンはいい父親なのか? 女性の悩みから探る「父親」の存在と不在【カウンセリング編】

2015/07/18 19:00

■「引っ張っていく夫&ついていく妻」イメージの息苦しさ

南波 先ほど気質の話をしましたが、これは大きく分けて保護されたいと思う「子どもタイプ」と、保護されたくないと思う「大人タイプ」がいます。子どもでも「大人タイプ」の人はいます。同じ家庭環境で育った兄弟でも異なります。気質は生まれつきのもので、変わらないものなんです。ただ、一般的な夫婦関係というと、どうしても「大人タイプの男性(引っ張っていく、保護する夫)と子どもタイプの女性(ついていく、保護される妻)」というイメージに引っ張られがちです。

 実際の気質がそこに合っている夫婦ならいいのですが、「子どもタイプの男性」と「大人タイプの女性」の夫婦だっています。「世間ではこういうケースが多い」「こういうケースの方が幸せそうに見える」といったものに縛られず、自分と相手はどういうタイプだろう?と自覚することがトラブルを避けるために役立ちます。また、今は従来の「家族を保護する男性」というイメージ以外に、男性には「育児に積極的にかかわる平成のイクメン」的な要素も求められつつありますよね。

――「家庭を経済的に支える」以外に「当事者としてもっと家庭に携わる」という要素も男性に求められつつありますね。

南波 「厳しくて仕事一筋の昭和のお父さん」なら「優しくて家庭に関わる平成のイクメン」がいい、と今ですとなりがちですが、これもすべてのケースで一概にそうとは言えないんです。家族間の相性の問題なので、厳しいお父さんがリーダーシップでぐいぐい引っ張っていった方がいい家庭もあります。これだからダメ、というのはないんです。


――自分の気質を知るにはどうしたらいいのでしょうか?

南波 書籍『究極のエニアグラム性格学』(竜頭万里子著、中央アート出版)、『子どもの「生まれつき性格」を大切にする子育て』(竹内成彦著、すばる舎)にテストがあるのでチェックしてみてもいいですね。ただ、自分で自分のことを診断するのはなかなか難しいです。よく見すぎてしまうケースも、悪く見すぎてしまうケースもありますので。客観的な第三者に見てもらう方がいいでしょう。相手との関係も、相手の気質を知ることで、ビシッと叱った方がいいのか、ヨシヨシと優しくするのがいいのか、理路整然と説いていくのがいいのか、知ることで策を採ることができます。

――夫婦間に限らず、自分でよかれと思って行ったアプローチが相手にまったく伝わらないどころか、逆効果になることもありますよね。

南波 過去と他人は変えられません。一方、変えられるのは自分の行動と他人とのかかわりあい方です。変わりにくい順に「生理現象→感情→思考→行動」になります。緊張したり汗をかいたりといった生理現象を自力で変えるのは難しいですが、行動はこれからでもすぐに変えることができます。過去と他人は変えられませんが、行動を変えることによって人間関係が変わり、結果、過去や他者の捉え方にも変化があらわれてきます。

 「性格は行動の束」と言われます。あの人いい人だね、というとき、それはその人がいい行動をたくさんしていたからそう言われるんです。なので、最初に感情や思考を変える、という難しいところから入らず、まずは相手の気質を知り、自分の行動を変えるところから始めてみるのが夫婦関係を問わず、人間関係をよりよくしていく手段の1つだと思います。


(文・構成・石徹白 未亜)

南波実穂子(なんば・みほこ):カウンセラー。内閣府設立認証 日本カウンセリング普及協会認定心理カウンセラー1級/2級。2004年より女性専門のカウンセリングルームcolorsを都内で運営。12年時点で、カウンセリングの臨床数はのべ6,000件。主なご来談内容は、うつ症状、親子関係、夫婦関係、生き方、お薬、精神疾患、セクシャル(性)、自分自身のふりかえり、不登校、性格についてなど。

最終更新:2015/07/21 16:22
『父という病 (一般書)』
イメージに支配されて現実を生きにくいなんてナンセンス