[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」5月12日号

自分と子どもを分離できない「婦人公論」読者が考える、「結婚しないわが子」の業

2015/05/09 19:00
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「婦人公論」(中央公論新社)5月12日号

 前号に引き続き、今号の「婦人公論」(中央公論新社)レビューも女性作家の記事からスタートしたいと思います。2011年東日本大震災で多くの人が断腸の思いで福島の地を去る中、今年東京から南相馬市に移住した作家・柳美里の「お金がない。食べるものもない。困窮状態で南相馬に引っ越して」です。福島第一原発から20km圏内が警戒区域に指定された11年4月22日、「わたしは『立入禁止』のネオン看板が立つ警戒区域の検問所にいました」という柳。それ以来、浜通りを中心に福島へ通い続けていたと語ります。

 柳の祖父は密航船で日本に渡り、南相馬市でパチンコ店を経営。「自分がいつか福島で暮らすであろうことは、震災からすぐの時期に意識していたのです」。ノンフィクション作品を書くための取材で通うことに「後ろめたさを感じていた」柳は、地元FM局のレギュラー番組で南相馬の人たちの話を聞くにつれ、それはボランティアではなく「私の生活の核」になっていったそう。うつの悪化で原稿が書けず「電気も水道も止まり、食べるものがないので、宝飾品や記念切手を換金して生活費をひねり出す」ほど困窮している中、南相馬で自身が築いたネットワークに助けられながら「南相馬という場所を『ゲド戦記』や『ナルニア国物語』のようなファンタジー小説に描きたい」という新たな希望をつかんだ柳。こうして1人の作家を再生させつつあること自体、今の福島が持つ力強いファンタジーなのかもしれません。

<トピックス>
◎柳美里 お金がない。食べるものもない。困窮状態で南相馬に引っ越して
◎特集 今あるモノを半分に。スッキリ暮らす片づけ術
◎どうしたものか、結婚しないわが子

■女性自衛官と「婦人公論」読者の交わらなさ

 さて今号の特集は「婦人公論」おなじみの断捨離企画。「今あるモノを半分に。スッキリ暮らす片づけ術」です。「婦人公論」読者にとってモノを捨てることは“人生を変える”ほどの意味深い契機となります。手を替え品を替え、この企画が行われているのが、なによりの証しでしょう。


 女優・中村メイコの「300坪の豪邸からマンションへ。トラック7台分の荷物を手放した」でケタ違いの断捨離を見せつけ、「永久保存版 5つのステップで一生困らない捨て方と収納法」では小さい子どもに教えるように懇切丁寧な断捨離を伝え……と、ここまではいつもの片づけ記事。しかしこれでは溜め込む女たちの気持ちは動かせないと踏んだのか、今回はなんと規律と訓練の極致、自衛隊式トレーニングまで引っ張り出してきました。それが「整頓上手な女性自衛官。その寮に潜入したら」です。

 陸上自衛隊・朝霞駐屯地。多くの女性自衛官たちが、ここで自衛隊流の整理術を学ぶといいます。自衛官いわく「整理整頓の基本は『水平直角』です。タオルも衣類も角や面を揃えて、すべて水平や直角になるように指導しています」。さらに、どこになにを置くかまで「整頓要綱」で規定されているとのこと。そして「ベッドメイクやロッカーの整理整頓がきちっとできていないと、『台風』に襲われることもあります」「『台風』とは、隊員の部屋を班長が抜き打ち点検し、片づいていないと発生する、言ってみれば『お仕置き』」「たいていは整頓されてないロッカーの中身を放られるとか。ときにはベッドごと別の部屋に移されていたなんていうことはありましたが」と、ダメな子にはかなりキツいペナルティが待ち受けているようです。

婦人公論 2015年 5/12 号 [雑誌]