[女性誌速攻レビュー]「ar」5月号

おフェロ顔で読者を呼び込み、美容情報は迷信と口コミだらけ! 「ar」の残念ビューティ特集

2015/04/29 21:00

 「よく言われるシンデレラタイム。22時に寝ると成長ホルモンが分泌されてお肌によいと言われるけど、それはちょっぴりウソ。実は、寝る時間に関係なく、就寝してから1~3時間の間に成長ホルモンが分泌されると言われています」
「紫外線が目に入るとシミが濃くなると言われてますが、コレも微妙なところ。紫外線に当たりすぎると網膜が傷ついて目には確かによくないけれど、シミとは関係ないと思ってOKです」

 まじかー!? “シンデレラタイム”も“目に受ける紫外線でシミができる”という話も女性誌ではお約束のように語られていること。それが、あっさり否定されていて驚きました。ただし、その証左となるものは何一つ提示されていません。まあ、もともとシンデレラタイムも紫外線の話も何の証拠もなく、ただ「よく言われているから」というだけのことではありますが。美容に関する情報はこうしたそれらしい雰囲気だけの情報が多いのだろうなと思いました。

 その舌の根も乾かぬうち、同じ特集内の「美賢人たちのとっておき美肌法」というコーナーで、モデルや読者、美容ライターたちが登場し、「(大高酵素で)赤みも出なくなった気がする」「ハチミツの働きで元気になれる気が」「コレで洗顔すると顔が小さくなる気がするの!!」「肌が冷えているとスキンケアの効きも悪くなると聞いて」と憶測や伝聞の曖昧な情報を紹介しまくっていることには笑うしかありません。

■美容情報の薄さにガッカリ

 美容企画は往々にしてそういった迷信のような口コミ情報であふれています。でもそれでいいんです。それを一か八かで試してみることが美容の醍醐味なのですから。「ar美容百貨店」という企画は、まさにそういった口コミを紹介するページ。ポーチの中身紹介、読者の美容アンケート、美容ライターの座談会……いかにオドロキの小ネタが盛り込まれているか、ということが勝負のページです。しかし、これがあまりに薄すぎてガッカリしました。


 ポーチの中身公開は、雑誌によっては本当に使用中の中身を撮影したり重さを計ったりするので、「化粧パフ汚ね!」「持ち歩きすぎだろ!」とツッコミを入れながら眺めるのが楽しいものなのですが、「ar」では使用している一部のメイクアイテムを商品の公式写真で紹介するのみ。もちろん「この人がこんなプチプラコスメを愛用!?」「こんな雑貨をメイクに転用!?」という発見も一切ありません。美容ライター3人の座談会「先輩たちの赤裸々トーーク美容反省会」では「三度の飯より保湿」「毎日のUVケア」「食生活を整える」といった、中学生でも知っているような話に終始。情報のすべてが役に立つか立たないか以前に、まったくおもしろくありません。

 美容に関する口コミ情報は眉唾モノも含めてインターネットに大量にあふれています。憧れの芸能人の美容法だってブログなどで知ることができます。こんなゆるい内容ではたして情報に飢えている読者は満足するのでしょうか。いや、きっと「ar」を買う人の多くは、「おフェロ顔がカワイイ」と思うくらいで活字は大して読んでいないライトユーザーなんでしょうね。ライトユーザー目当てで作られているから、雑誌としての主張も薄く個性も強くないし、ビジュアルもおフェロ顔一辺倒で大して凝ってるようには思えません。しかし、それは筆者が毎号熟読しているからそう思うだけで、ふだん立ち読みか、数カ月に一度買うくらいの読者なら、むしろ変わらず「おフェロ顔が見たくなったらar」というほうが安心感があるのかもしれません。
(亀井百合子)

最終更新:2015/11/26 23:57
ar(アール) 2015年 05 月号 [雑誌]
リアルよりSNSを重視する時代の新しい雑誌