サイゾーウーマンカルチャーインタビュー権力にひれ伏せさせるのは男の病気? カルチャー 『男をこじらせる前に』湯山玲子×『ルポ 中年童貞』中村淳彦 対談【後編】 「権力にひれ伏せさせるのは男の病気」中年童貞が映し出す、男の病理の処方箋とは? 2015/04/26 19:00 インタビュー 中村 恋愛とか女遊びが第一みたいなのは、飽きる。面白くない。 湯山 それですよ、恋を楽しむのではなくて、女「遊び」になっちゃう(笑)。それは、金・権力の世界であって、何人と遊んだかと記録をつけたりすることに重きがある。「オレってすごい」の根拠にしたりね。 中村 でも、女性も男性の肩書で値踏みしますよね? 上層以外の男性たちはウンザリしていますよ。 湯山 確かに、女は値踏みしますよね。でも、そんな回答は、男の経験がない若い女だけで、もののわかった成熟した女になると、「バカで朗らかが一番」などという意見がでてきますよ。本にも書きましたが、いつも朗らかでこっちを攻撃しない人が女性は好きです。コンプレックスで卑屈にならない人。逆にいえば、女の要求はそこまで現実的に、かつ人間の本質を見ようとしている。 中村 でも、結局、ある程度の収入がないと、どうしても円満にはいかないですよ。低収入で格差社会の下層とされている介護現場で中年童貞の行動で顕著なのが、彼らは弱い者イジメをやめない。「社歴1カ月」とか「ヘルパー2級を持っている」という要素でも、マウンティングしますからね。僕の周囲でいえば、イジメ好きの中年童貞が「あいつ大人になって絵なんか描いているんだよ。本当にダメな奴」って、東京藝術大学大学院卒の男性介護職員を徹底的にバカにしていたことがある。東京藝術大学とか大学院を知らないんです。 湯山 権力にひれ伏せさせたい、というのは、本当に男の病気ですよね。女性ももちろん権力は好きですが、その刀を振り回すとバッシングの方が多いから、自動的にブレーキがかかるようになっている。例えば、主婦と経済産業省の女が一緒の飲み会にいたとして、経産省の女がマウンティングするのは許されないんですよ。というか、旧来的な女の幸せは専業主婦だったりして、“トップ”がたくさんあるので同格なのです。なので、同じ飲み会にいたらユナイトできる。でも男の人は、名刺の肩書でその席での発言権が決まってしまう。そこで小さく負け組を自認するのではなく、堂々と発言して、男性もユナイトする快感回路を太くした方がいい。これは訓練だから。 中村 難しいなぁ。99%、どこかで負けるマウンティングが無意味ってことは理解できますが、笑顔でユナイトしている男もキモチ悪い。答えがないですね。 湯山 競争社会の奴隷になってしまってるんですよ。こんな肩書の収入の少ない自分が三ツ星レストランに入れるわけがない、とか勝手に気後れしてしまっている。そんなの簡単で、単にやりくりして3万円ほどつくって予約すればいいだけの話。どうせ、と絶望する方が、実を言うとラク。なぜなら、行動を起こさないでいいから。希望の方が難しいのは、行動と直結しているから。とにかく足を動かした方がいいです。 前のページ123次のページ Amazon 『ルポ 中年童貞 (幻冬舎新書)』 関連記事 「必要とされる私」の関係妄想――ペット命な中年女性の心に潜む“望み”とは「おばさん」になりたくない――女と「おばさん」の分断と、地方都市の中年女性たちセックスを謳歌しなくてもいい――映画『ビッチ』の性事情、女性に向かう視線の行方木嶋、塩谷、震災、ミソジニー……湯山玲子率いる女傑7名が語る女の業「渋谷を再びカルチャーの中心に」1980年代から現在へ、“渋谷文化”はもう生まれない?