サイゾーウーマンカルチャー漫画レビュー親の介護と向き合うマンガ カルチャー [マンガレビュー] 倒れた親は施設か家か、延命はどうする? 問いの中で“親の介護”を描くマンガ3冊 2015/03/28 19:00 マンガ介護をめぐる家族・人間模様 ☆認知症の施設介護をスタッフ目線で見る 『49歳未経験すっとこ介護はじめました』(小学館) 『かあちゃんといっしょ』でも『親が倒れた!』でもそうだったように、いまだにたくさんの人が施設か家かで悩むのは、親を施設に入れることに後ろめたい気持ちが拭えないからだ。その介護施設に、49歳にしてまったくの未経験で就職した実体験を描いたのが『49歳 未経験 すっとこ介護はじめました!』(小学館)。 漫画家の八万介助は仕事が激減し、介護士になる。なりたくてなったわけではない。年齢的、体力的に、ほかの仕事がどれも続かなかったのだから仕方ない。といっても、なんせ49歳未経験のおじさんだ。ヘルパー資格を取ったといっても、採用してくれる施設はない。いくら人手不足でも、いや人手不足だからこそ、求められるのは即戦力。やっとパートで採用されたのは、幸か不幸か介護老人保健施設の認知症棟だった。認知症棟で勤務できれば、ほかの施設でも通用するといわれるくらいハードな介護現場だ。 介護スタッフもまた個性あふれる面々だ。介護現場は離職率が高い。その大きな原因の1つが人間関係だといわれている。便には慣れても、人間関係は泥沼ということもある。女性が多く、多忙を極める介護現場では、使えない新人おじさん介護士への風当たりは、当然のごとく台風並みに強い。そんな八万さんも経験を積むにつれ、看取りも経験し、入所者との心温まる交流もあったりする。介護士として成長した八万さんは、これからまだまだ公私ともに介護にどっぷり浸かることになりそうだ。 介護の形はいろいろだ。在宅介護をするにしても施設に入れるにしても、いろんな人の目があって、風通しがいい方がいい。八万さんが勤めていた施設も、介護士の世界では異質な八万さんがいることで、何かしらの効果はあったのではないかと思う。両親の介護が始まったばかりの八万さんも、息子としてだけではなく、介護士として、あるいは漫画家として介護を客観視できれば、少しはラクになるんじゃないだろうか。 取り上げた2作が男性主体の介護物語だったが、これからはもっと増えていくだろう。これまで親の介護にかかわってこなかった男性や、介護なんて他人事と思っていた男性が、男性介護の話に触れる機会が増えるのは大歓迎だ。八万さんやテツオのように、一人息子とか、男兄弟しかいないといった事情がなくても、嫁や女きょうだいに介護を押し付けず、自分の親とちゃんと向き合うことは絶対必要だと思う。 そのとき、施設を希望すれば、そう待たずに入れて、満足なサービスが受けられる。在宅を選択しても、家族の負担を増やすことなく、24時間サービスが受けられる。そうなっていれば、親にとっても、子どもにとっても理想的だ。親のことで子どもが後悔したり、後ろめたく思ったりしないで済むだろう。それなら最期の場所が自宅なのか、施設なのかは、大して問題にはならないはずだ。 そのためには、介護士不足をはじめとして、山積する課題の解決が急務だ。超高齢化社会が進み、老いと死が日常になる日は、もはやそう遠くない。その頃には、テツオも八万さんも、アオイもケイもサキも、介護される側になっているかもしれないのだから。 前のページ12 最終更新:2015/03/28 19:00 Amazon 『親を、どうする? (コンペイトウ書房)』 考えないようにしてるなら、とことん向き合っちゃえばいいのよ 関連記事 父親へのわだかまり、母親への「ごめんね」――団塊オトコが“子ども”になる介護「大人になったら殺そうと思っていた」父親を介護する息子の殺意が切り替わった瞬間『ペコロスの母に会いに行く』岡野雄一氏の、「親と距離を置くことで救われる」介護「親子の愛憎劇の幕引き、憎いなら憎めばいい」親の介護で繰り返される業老後はすぐにやってくる! 親の介護に独り身の老後、それぞれの現実問題 次の記事 情けない西島秀俊が見られるチャンス! 映画『脳内ポイズンベリー』鑑賞券プレゼント >