「婦人公論」に武田久美子登場! “子どものため”の大義名分で自らの首を絞める完璧母たち
都内に暮らす主婦(59歳)は、特に反抗期もなく育った“いい子”なはずの大学2年生の息子が、「私に対してはもちろんのこと、世の中をなめているとしか思えないような態度ばかりとるんです。会話も減り、何を考えているのかまったくわからなくなってしまいました」と嘆きます。奥様の読みによると、「変化の裏には一年前から交際を始めた恋人の影響」で、怒涛の恋人バッシングへ。家に遊びにきても挨拶ナシ、断りもなく泊まっていく、お茶やお菓子のお盆を片づけない、敬語をまったく使わない、マナーが悪い……。お茶出すなや、泊まらせるなや、というツッコミも虚しいばかりですが、すごいのはこの方、息子がこうなったのは全てこの彼女のせいだと信じ込んでいるところ。「寂しさや苛立ちに襲われた時、昔のアルバムを見るようにしているという。『こんなかわいい時代もあったのだから』とひとりつぶやきながら、息子が生まれてきてくれたことへの感謝を思い出し、気持ちを静めている」とのことです。こりゃもう世の中からオレオレ詐欺がなくならないわけですな。ちなみにこちらの奥様、友達とコックリさんをやって「わざと指先を『わ・か・れ・る』という順番に動かしたりしながら大笑い」してるそう。なんも言えねえ!!
■「子どものため」という批判しにくい大義名分
親の行き過ぎた愛情が子どもの自立を阻んでしまうのは、よくある話。雑誌やネットで紹介されるスーパーワーキングマザーたちの過酷すぎる1日のスケジュールがしばしば話題になりますが、もしかしたら本人にとっては睡眠3時間、ひと時の休みもなく家族のために体を動かしていることの方が楽だったりするのかもしれません。しかし、そういった「完璧母」願望が、弁当箱ひとつ洗えない人間を量産しているきらいもあり、先述の大学2年生息子は“なっとらん恋人”という手段でなんとか母の呪縛から逃れようとしているのかも。
今号には、昨年7月にアメリカ人の夫との離婚協議を報じられた、貝殻界のデンジャラスクイーン・武田久美子が登場。報道では専業主婦を望む武田と妻には働いてほしいと願う夫とのすれ違いとありましたが、実際には超えられない文化の壁に悩んだ末の結論だったのだそう。「私が母親であることを最優先にしていたのに比べ、夫の最重要事項は自身の仕事のキャリア。それが私や娘に犠牲を強いることになってもおかまいなし」。アメリカ人が妻に「パートナー」を求めるのに対し、日本人は妻に「お母さん」を求めるとは一般的によくいわれることですが、おそらく武田もこの文化の壁にぶち当たり、結果「離婚して一番よかったのは、嫌いな人の顔を見なくてよくなったこと」に行き着いてしまったのではないでしょうか。
しかし、武田の1日のスケジュールもまた、スーパーワーキングマザーに近いものがありました。「朝は4時に起きて娘のお弁当を作り、5時前にはフィギュアスケートのリンクに。レッスンが終わったら学校へ送ります。その後、時間があればエクササイズで体を動かし、帰宅して軽い昼食。娘を迎えに行っておやつをとらせ、宿題をみる。そして夕方にはバレエ教室へ。彼女がレッスンを受けている間に、私はスーパーで食材の買い出し。帰宅後は夕食をとり、再び宿題などをさせます」。そんな武田も睡眠時間3~4時間マザー。しかしインタビューページの写真にはやつれた様子どころか、今にも貝殻ビキニを着そうな美貌で微笑んでいますから、母親の「子どものため」のがんばりは、いわば麻薬に近いものがあるのだなぁと痛感させられました。
家族にイライラさせられても、また家族に癒やされる。女たちの「前向き」スイッチとは、肉体と情の酷使の上にそっと置かれた、届きそうでつかめないイチゴのようなものなのでした。
(西澤千央)