サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー「VERY」“女に好かれる女”の罠 カルチャー [女性誌速攻レビュー]「VERY」1月号 「VERY」が目指す“女に好かれる女”の指標に感じた、結局男モテ目線の罠 2014/12/18 19:00 女性誌速攻レビューVERY しかし「女に好かれる女」は、自分が「女にあこがれられる女」であることをひけらかしたりはしません。この特集に出ている「女に好かれる女」たちは、「自然体でいるのがいちばんだと感じています」「自分の気持ちを素直に伝えたら周りのママたちもそんな私を理解してくれた」「自分はもちろんだけど、家族や周りの人も笑顔にできたらいいな」と、自然、素直、笑顔、などポジティブで無欲で献身的であることを訴えます。 結局は、嫌なことがあってもそれを表に出さず、何事もポジティブな精神で乗りきれる女が「女に好かれる女」と言いたげです。もちろん、ポジティブであることになんら悪いことはないですが、ポジティブじゃないと友人関係も家族関係も破たんしてしまうと思い込むのは、少々、窮屈な気がします。 この特集には、幼稚園ママに好かれる女は「子どもは子ども、大人は大人と割り切れる女」、お仕事ママに好かれる女は、「皆の意見に耳を向け、無駄なく段取れる女」などといった具体例も出てくるのですが、なぜかその本人たちが「自分が好かれる」理由を語るとなると、自然、素直、笑顔と、ありきたりで貧困なポジティブワードしか出てこないのかが疑問です。それ以外の具体的な理由を言うと、あまりにも「好かれている」ことに自覚的で、逆に嫌われてしまうことを心配しているのでしょうか。 これって、男性にモテるための配慮と同じなのではないでしょうか。自己顕示欲を表向きに出すと、男にドン引かれてしまう……それは女同士でも一緒なのだと思うと、「VERY」の言う女モテに息苦しささえ感じてしまいます。 ■むしろ小説の方が現実的? そんな「VERY」ママたちのフラストレーションのはけ口は、なんといっても今月号から始まった桐野夏生さんの小説『ロンリネス』でしょう。これは以前同誌で連載されていた、ママ友グループの実情を描いた小説『ハピネス』の続編です。『ハピネス』では、主人公の有紗が海外赴任中の夫との離婚危機をなんとか乗り越えたところで終わっていましたが、続編では、その夫が帰国したものの、また険悪な空気に戻ってしまったというところからスタートします。 「VERY」にはこのほかに、イケダンをテーマにした辻村深月さんの『クローバーナイト』という小説が連載されていますが、こちらも衝撃的な展開です。主人公夫妻の夫である裕が、取引先の夫婦から「保活(保育園に子どもを入れる活動)のために、離婚をする」という話を聞いて戸惑うというエピソードがつづられています。 2つの小説を読んでいると、自然、素直、笑顔なんて言葉で全てが片づけられるほど、世の中も夫婦関係も子育ても甘くないことが窺いしれます。むしろ現実社会は、この小説の中くらい面倒くさいものだからこそ、表向きの自然、素直、笑顔が必要なのかもしれませんが、どちらにせよ「VERY」妻たちを取り巻く人間関係の難しさを痛感してしまいました。 (芹沢芳子) 前のページ12 最終更新:2014/12/18 19:14 Amazon 『VERY(ヴェリィ)2015年 01月号 [雑誌]』 「別に好かれなくてもいいじゃん」は愚かな意見なの? 関連記事 都内ママは、住んでる街でファッションが決まる! 都会派「VERY」を地方ママはどう見るか?“ママ度”を調節して人間関係を生き抜く! 「VERY」の世渡り上手すぎるファッション術社会問題を語る女性ファッション誌「VERY」が、それでも夫に頭が上がらない理由「スクール・ママ・カースト」のリアルを暴く、「VERY」ママの小物術ボーダーを「モテ」とは別次元の価値観で着こなす、「VERY」の余裕 次の記事 優等生的な「正しさ」を求める危険 >