深志美由紀インタビュー

「駆け落ち」「熟女パブ」「別居婚」……波瀾万丈の女流官能作家が語るSMの扉を開いた男

2014/10/12 19:00

――今の旦那さんはどんな方なんでしょうか?

深志 売れないバンドマンで、ラブホテルの清掃員をしている2歳年下の男性です。私と付き合い始めた頃は、アダルトビデオ店でバイトをしていてお金がなかったので、私が熟女パブに勤めて養っていました。女癖が悪い人なんですけど、私と付き合って結婚するまでは一度も浮気をしなかったんですよ。でも、結婚してから間もなく私の友達と浮気をしたので、浮気相手の友達に対して裁判を起こしました(笑)。

――旦那さんに対して、怒りは湧かなかったのですか?

深志 そりゃ怒りました。離婚届を書かせてあずかりました。でも基本的には「彼を養おう」「私が何とかしなきゃ」という気持ちでいますね。かといって、ちんこをほかの女と共有するのは嫌ですが(笑)。結局、バカでいろいろやらかしている彼を支えている自分が好きなんです。その件がきっかけで、団鬼六賞に応募したので、夫にはいまだに「俺が浮気したせいで作家になれてよかったね」って言われますよ。今、夫は、バンド仲間が住んでいる地方に引っ越してしまったので、籍を抜かずに別居婚状態です。

――端から見ると、まるでお母さんと息子のように思えます。


深志 夫は私のことを母親だと思っているかもしれません。夫の母親は、彼が高校生の頃に亡くなっていて、だからなのか、浮気相手も大学生の子どもがいるような女性ばかりなんですよ。持ってるAVも人妻モノばかりですし……根っからのマザコンです。

 私も、それまではどちらかというと「お父さん、私を守って!」という感じで、20歳ぐらいの頃は、一回り以上年の離れた男性と付き合ったりしていましたが、今は“病的”に父性を求める部分は昇華された気がします。結婚前に付き合っていたのが年上、最初の夫が同い年、今の夫が年下と、恋愛や結婚を経て、1つずつ壁を乗り越えているんだな、と自分で感じています。今思うのは、男性に守られるよりも、金銭的にも自分の足で立っている方が楽しいということ(笑)。ほかの人からしたら不思議な夫婦関係かもしれませんが、「結婚するならあなたしかいない」とお互い思い合っています。

――紆余曲折を経て、落ち着く場所に落ち着いたということでしょうか。

深志 ただ、私のようなMの女性は、病的に父性を求める部分が昇華されても、自立したとしても、トラウマが消えるわけではないんです。Mの女性は、やっぱりどこか病んでいると思うんですよね。そもそもSM嗜好の方は、セックスをこじらせている方が多い。そういう人にとってのセックスとはなんだろう? というのを、執筆活動で常に追い求めていきたいと思います。

深志美由紀(みゆき・みゆき)
神奈川県生まれ。2001年集英社ノベル大賞佳作を受賞しデビュー。10年『花鳥籠』にて第1回団鬼六賞優秀作を受賞。著書に『10分間の官能小説集3』(アンソロジーの一編・講談社)『ゆっくり破って』など。


最終更新:2014/10/12 19:00
『美食の報酬(講談社文庫)』
芸の肥やしになる男はイイ男だと思うわけ